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一週間後、玄関のチャイムが鳴った。

出てみるとそこに、みおちゃんが立っていた。


この前とは別人だった。


「いきなりきちゃって…驚きましたか?」


「そりゃ驚いたよ。それに、イメージもぜんぜん変わってるし」


「女の子ってメイクで別人になるんですよ。

わたしずっと自分に自信なくて…ツケマしてカラコンして、メイクばっちりでないとなんか出歩けなかったんです」


たしかに前に会ったときのメイク顔と違い、あっさりとした顔つきだったが、

彼女らしい感じが伝わり…


「素っぴんのが可愛いよ!」

とつい言ってしまった。


彼女はテレて舌を出す。


「で…しょうさんはどんな感じですか?」


「残念ながらあまり変わらずだよ」


実際、急に目を覚ましたと思ったら、ご飯食べてお腹いっぱいって言って、また寝て…の繰り返しだった。


「昨日なら…あいつ起きてたんだけど。タイミング悪かったね」


でも彼女は笑顔で、


「大丈夫ですよ。今日はきっと目を覚まします。覚ましてくれないと今までの意味がないんです…その確認に来たんですから」


「…意味って?」


「あっ、気にしないでください」


はにかんだ表情が以前より可愛らしく思えた。


「でも、わざわざ遠くから大変だったね」

と言うと、彼女は頭を振り、


「隣町だからすぐですよ」

と答えた。


「地元の大学にしなかったの? あれだけ考え直すように言ったのに。やっぱりあいつのせい?」


「いえ、あくまで自分でちゃんと考えて決めた結果ですから」

きっぱりと言い切った。


「人生を変えられたとか、道を間違ったとか、ちっとも思ってないです。わたしがわたしで決めたんです」


彼女に嘘はなさそうだった。


「それなら、よかった。じゃ一緒に弟のところに行こうか」


ふたりで弟の前に座った。


彼女は前のときと同じように弟を見つめている。


そして、弟の耳元に顔を近づけて何かささやく。


「ね、なんて言ったの?」


「それは言えませんねー。あえて言うなら、おまじない、かな」


しばらくして弟の身体が揺れた。

布団から手が伸びてきた。

どうやら携帯を探している。


彼女は置いてあった携帯を取ってそっと隠す。


「…お兄ちゃん、携帯は?」


寝ぼけ声で弟が言う。


弟が目を覚ました!!


彼女の言った通り。


弟はおれの隣にいる彼女に目をやった。


素っぴんでもすぐに彼女がわかった様子で、弟は布団をかぶってあわてて顔を隠す。


彼女が厳しい口調で言った。


「もう逃げないで! 隠れたりしないで! わたし、嘘は一番きらい!」


それから、ゆっくり話しはじめた。


「その嘘をあなたはついた。それは消せない事実。わたしの記憶からは消えない。


でもね…あの一年間、メールしたり電話してた時間はわたしにとって意味あるものだった。

あれは嘘じゃなかった。


それに…嘘をつかせたのは、わたしにも責任あったのかもしれない。わたしが写真なんか送ったから。そしてあなたの写真も見たいって言ったから。


でも…それは顔が見たかったわけじゃない。

あなたの存在を目で確かめたかっただけ。

わたしもあなたと同じくらい不安だったんだよ」


弟は目をそらしたまま、話を聞いている。


「わたしね、あなたの大学に通うことにしたんだ。ちゃんと引越し先も自分で決めて、今は部屋の片付けして、引越しの準備をして・・・もうすぐ自分の、自分だけの毎日が始まるんだ。


そのために必要なものを用意したり、手続きしたり。なんか、ばたばたと大変だけど、でも、それだけでわたし生きてる意味を感じてるんだ。


自分の意思で自分でしてるって思うことが。

そんな今の生活は、あなたが導いてくれたんだよ。


だから今のわたしがある。

あなたとの出会いがなかったら、別の人生だったかもしれない。


どれが正しいかなんかわからない。

でも、それは死ぬまで誰にもわからないことでしょ?


わたしたち、2人のメールや電話でのやり取りは本物だった。


嘘はなかった。


本物だったから、わたしきっとこうやって導かれていま、ここにいるの。


あなたが言ったように、神様はいると思うんだ。でも、2人でひとつではないんだよ…

きっと。


人間はそれぞれひとりずつちゃんと自分の意味を見つけるために生きてるんじゃないかな。


そしたら、2人で力を合わせたら3倍にも4倍にも…もっともっとお互いの力を出せるはず。


分身じゃだめ。半分ずつじゃだめ。

半分じゃ支えられなくてどっちかが倒れてしまう。わたしたちみたいに…


あなたは嘘を後悔した。自分の外見を隠そうとした。


それはあなたもまだちゃんとひとりじゃないから。


このまま寝てても…変わらないままなんだよ」


彼女がせつなく呟く。


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