26
翌日、待ち合わせ場所に行くともう彼女はいた。
写真で見たまま。
目立つから、すぐにわかる。
ひとはまばらだった。
彼女がこちらを見た。
おれは思わず目を反らす。
コツコツと足音が近づいてきて…
「しょうさん!」
彼女が嬉しそうに言う。
おい!?
なんで?
顔を上げて、彼女を見る。
「やっぱり〜、写真のまんまだね。すぐにわかったよ!」
・・・写真?
「それだけかっこいいし、頭もいいんだからモテて当たり前だよね…でも、わたしはしょうさんを信じてるから」
しょう、でなくて兄のりょうだとつい口走りかけた。
あいつ、おれの写真を使ったんだな。そういうことか…
弟は彼女をだましていた。
自信がないのはわかるが、それはしてはいけないこと。
弟にはかわいそうだが、その時点で優しさも思いやりも消されてしまう。
嫌われて当然な運命。
おれがこのまま嫌われたら…
ふと頭をよぎった。
笑顔の彼女に言った。
「みおちゃん、他の大学にも受かったんだよね?」
「うん、そうだよ!」
「なら、よかったら…そっちにしたら?」
彼女の顔が曇る。
「いまさら、どうして? やっぱり嫌いになったの?」
「そんなんじゃない。ただ調べたら地元の大学のがレベルも高いみたいだし、みおちゃんの将来のためだと思う」
彼女が下を向いて呟く。
「しょうさん…なんか、変わったね。やっぱり好きなひとできたんだ」
おれは言った。
「…うん。気になる人が、いる」
彼女の身体がぴくっと震えた。
「おれたちにはメル友の関係が一番いいんだよ。それに、みおちゃんみたいに可愛い彼女だといつも心配してしまうし」
よし、もうひと押しだ。
「おれ、こう見えて嫉妬深いんだ。これからも…離れてても、メル友のままでいない?」
彼女は無言のまま。
「なっ? それでも二人はつながったままにかわりないんだし」
とあわてて付け加えた。
すると、彼女は小声で…
「まただね。また、嘘ついてる」
どきっとした。
「あなたは…しょうさんじゃない」
それまでと違い、彼女の口調は早く強かった。
「しょうさんは、おれなんて言わなかった。いつもぼく、ぼくたちだった。たしかに声も似てるし、送ってもらった写真もあなたのもの」
おれは何も言い返せない。
「でも、あなたはしょうさんじゃない。それくらい、わたしには伝わる。なんで嘘つくの!」
当然の流れだった。
しょうのふりをして、
しょうを悪者にしてでも、二人を離してあげよう。
それが一番自然では…
おれのなかにあった迷い。
おれのあさはかな考えに過ぎなかった。
「わかった、もうすべてを話す」
嘘をいくら重ねても仕方ないだけ。
「ごめん、おれはあいつの兄貴なんだ」
しょうの携帯を見て、二人のやり取りを見てなんとかしてあげたかった、それは事実。
「ほんとは会ったらすぐに話すつもりだったけど、あいつがおれの写真を使ってたとは知らなかった」
彼女は無言のまま、おれを見ている。
「だったら、しょうのふりをしてみよう。
みおちゃんから送られたメールの文章を思い出してさ。でも、結局は二人のこと。事実を伝えるしかないんだよな」
彼女はおれから目をそらさない。
「…しょうさんはどこ?」
「しょうはここにはこれない」
彼女は何かを察したように、すがるようにおれを見ながら…
「しょうさんに…なにかあったの?」
おれはそれには答えず、
「みおちゃん、今からうちにきてくれないかな?」
と声をかける。
彼女は小さく頷き、無言のまま、おれの斜め後ろをふらふらと歩きだした。




