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あの夜、おれはふたりのメールのやり取りを読んでしまった。
メル友としての出会いだったようだ。パソコン好きだった弟らしいな。
弟が彼女の悩みを聞き、受験や家族や…
いろんなアドバイスをしている。
着信履歴から、メールだけでなく直接、話もしてたみたいだった。
彼女の父親は厳格で、本人も優等生として、プレッシャーを感じるつらい毎日を送っていたらしく、1日も早く家を出たかった様子。
優しい弟は家であった辛い出来事を聞いて、彼女を励ましていた。
今までそれだけ辛い思いしたんだから、大学生になったらちゃんと幸せが待ってるよ。
神様はみんなに公平なんだから。あと少しの我慢だからね。
彼女は北国に住んでるみたいだった。今日はこんなに雪が凄かったんだよ、と小さな雪だるまの写真があった。
単なる相談相手から…
いつしか、彼女は同じ大学に行きたいと思いはじめていく。
これだけメールと携帯で毎日、楽しいんだから一緒にいたらもっと幸せだよね!
同じ大学に入るのを支えに今は頑張るんだからっ!
それに対して弟は、
受験は人生の大切な岐路なんだから、しっかり考えるんだよ、と冷静に返事している。
たしかに正しい意見。
だけど、彼女はそれにすぐに返信する。
大切な人生だから、一緒にいたい。
会いたいの。一年間ずっとそのために頑張ってきたんだよ。
……いやだった?
弟は返信に少し時間をかけて、
そんなわけないさ。
こんなに心が通じた相手は生まれてはじめてだから。
たしかにおれが見ていた限り、弟はあまり社交的ではなかった。
いつもゲームやパソコンをしてるイメージ。
友人も少なく彼女もいなかっただろう。
おれとは基本的に正反対。
こうしてメールを読んでる間にも新たなメールが届く。
あるメールに彼女自身の写真を見つけた。
目元がくりっとして可愛らしい感じのコ。
自分なんかと釣り合うわけがない、弟なら思ったかもしれない。
あいつは賢いからメールを打ちながらも、この先に待つ出来事を冷静に考えていたはず。
心のつながりは、あくまで心までだと。
…彼女が原因だったのか。




