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「久しぶりだね。でも、ちせは全然変わってないな」
ちせは頷くだけ。
「おれは・・・変わったかな?」
また頷く。
やっぱり嫌われてる?
あるいは別の相手が…
でも、いまそれは関係ない。大切なのは自分の気持ちを伝えること。
自然と言葉が出てきた。
「おれは三年間ずっとちせが好きだった」
ちせは驚いた表情を見せ、少しして小声で言う。
「・・・なんでいきなり?」
明らかに戸惑っている。
「言えるときに言わないと…おれもう後悔したくないんだ」
ちせはしばらく下を向いたままだった。
顔を上げたとき、彼女の顔に何か光が反射して目に入った。もしかして涙…
そして、彼女の手が伸びてきて…
「あなたと一緒にいたい、です」
そう言ってくれた。
そのセリフに一瞬、おれは戸惑った。一緒にいれるのは二週間だけ。
だけど身体は反応する。おれの手が小さな彼女の手を握る。
やっと、やっと、やっと思いを伝えられた。
三年間の思い、いやもっと前から抱いていたこの気持ち。
ちせを感じたい、触れてみたい。その気持ちは抑えられない。
おれはあの頃と変わらない小さなちせの身体をぎゅっと抱きしめた。
しんとした音楽室にちせのすすり泣く声が反響していた。
おれは医師との約束通り二週間後に入院した。
学校には親の仕事による転勤のため引っ越すとなっていた。
ちせには…
何も言わなかった。
いや言えなかった。
入院と同時にちせのアドレスも電話番号も拒否にした。
連絡を期待する自分がいた。
弱い自分。
情けない自分。
一緒に過ごした記憶がよみがえる。
目が見えないことを頑張って隠した。
でも、ちせは楽しんでいたのか、いつも不安だった。
周りから聞こえてくる恋人たちの笑い声。
おれはちせを笑顔にさせているのだろうか?
その表情をちゃんと確認できない。
不安ばかりが頭をよぎる。
この先のことを考えると、きっとこれでよかった。
ちせには幸せになる権利がある。
おれの不幸を背負わせてはいけない。
これからは新しい生活が始まる。入院生活がおれを待っている。
ちせのいない生活が…




