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ある日、めまいを感じた。

目の前がかすむ。

うまく歩けない。

その場に座り込んだ。


一緒に歩いていた母親がそれに気づき、声をかける。

「大丈夫?」


母親の顔が歪んで見えて、しばらくして目の前が真っ暗になった。


おれは気づいたら病院のベッドにいた。


はっきり見えないが母親が入ってきたようだ。


しばらくして白衣を着た人物が入ってきた。


「いまは、目は大丈夫かい?」


「すこしぼやけますが大丈夫です」


母親が言う。

「ちゃんと正直に言いなさいよ!」


たしかに少しではない。

だけどなんとか相手の区別はつく。


医師は入院するように薦めた。


できれば早い方がいい。

このまま放ったままでは目が見えなくなると。


医師に言った。


「少しだけ入院を待ってもらえませんか?

テレビもみないしなるべく目を閉じながら負担かけないようにします」


医師は困った表情をした。


「まだ、おれにはやり残したことがあるんです、お願いですっ」


それが叶わないまま目が見えなくなるくらいなら、そのまま死んだほうがまし。

後悔したくなかった。


高校で再会してやっと気づいた、この気持ち。


それを伝えたい。

伝えることさえ叶うなら、見えなくなっても後悔はしない。


医師は冷静な口調で、

「仕方ないな、なら二週間だけだよ。あと何かあったら必ずすぐに連絡するように」と言い残し病室を出ていった。



翌日、母親に連れられて学校にいった。


制服を着て正門に立っている。入学式を思い出した。あのときと同じ新鮮な気持ち。


ちせのいる学校。



授業のことなど頭に入らない。友達の声も届かない。頭のなかにはちせだけ。


チャイムが鳴り、学校の授業が終わる。


早く伝えたかった。


走りたいけど、走れない。自分なりに足早に歩く。


ちせを探した。

そして、ちせを感じた。

ちせに近づいている。


やっと見つけた。


ちせを呼び止めたとき、見えていたのは彼女のぼんやりとした輪郭だった。


でもそんなこと関係ない、彼女から伝わる温かさ優しさを感じている。


だから、ちせを見つけられたんだ。


あの写真を撮ったころと変わらない同じ波長。


入学して何人かの女性に告白されたけど…


誰からもそんな温かさ優しさを感じなかった。


友達に、なんであんなに可愛いコを振るんだよ?

もったいないなぁ。


と言われた。


答えは簡単だった。


人形にしか思えないから。

どんなに可愛くてもそれは人形。


人形に恋はできない。


おれにとって、ちせ以外みんな人形にしか思えない。


心が伝わってこない。


みんなおれの外見しか見ていない。


心が通じるわけがない。



彼女だけは間違いなく、おれの心を伝え感じてくれる相手。



「ちょっと話していい?」


きっと彼女は戸惑っていたはず。


初めてちゃんと声をかけたんだから。


おれは彼女をだれもいない音楽室につれていった。


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