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カシャッ…

カメラ音がした。


お母さんがはしゃぎながら言う。

「お涙ちょうだい~!やっぱり2人はお似合いだねっ」


そして彼の口が動いた。


「ごめん、こんなおれでよかったら

もう一度付き合ってほしい」


黙ったままのわたしに

お母さんがささやく。


「ちゃんと答えてあげて」


わたしなんかに…

こんなわたしなんかに…

わたしのことブログで見てたんでしょ?

いろいろ知ってるんでしょ?


「なんで、ごめんって謝るの!

謝るのはわたしのほう…

もう前のわたしなんかじゃないんだから!」

わたしは泣き叫んだ。


ううん、お母さんが優しくささやく。


「もう山姥が前のあなたを食べちゃったんだから。

今からは新しいあなた、いや、前のあなたに戻ったの。息子と出会った頃のあなたにね」


涙が溢れて声に詰まる。


でも、彼氏が一生懸命言ってくれたんだ、

だからわたしも応えないと。


「こ、こんなわたしだけど…

あなたと一緒にいたい、です」


だってわたしの居場所は…

そこにあるんだもん。


お母さんが彼に言った。


「もうこれからはお母さんにあまり頼らないでね」


そして、わたしの方を向いて、


「悪い女の子は退治したから、わたしの役目はもう終わり。あとはよろしくね」

と言い残して病室から出ていった。


わたしは彼を見つめた。

ちゃんと彼の目はわたしを見ている。

わたしの中身を見通せるすごい目なんだ。

見えないんじゃない。

わたしの心までしっかり見通せてる。

だから何の心配も不安もいらないんだよね。


彼に向かって言った。


「わたしね、もう捨てられたと思ったんだ。

でも、あれはわたしの目が悪かったんだよね。

あなたをちゃんと見てなかった。

これからは毎日、ここに来てちゃんと見れるようになる。心で話せるようになる」


わたしは大きな彼の身体をしっかりと抱きしめた。

いや、彼の心に抱きしめられていたのかもしれない。

時間が止まったみたいに二人ともしばらく動かなかった。


彼に向かって、

「じゃあまた明日にね」

と言い残し、家に帰った。


自分の部屋に戻ってきた。

でもここはわたしの居場所じゃない。


パソコンを開いて、ブログをたちあげると

山姥からメールが来ていた。


そこにはさっき写した写真が添付されていた。

彼と二人並んだ写真。

わたしは涙目。


その写真をブログに載せて、書き込みした。


わたしの本当の居場所を見つけました。

その居場所とともにわたしはこれからも生きていく。

カウントダウンは、ずっと「1」のまま。

これからは毎日を今日だけと思って生きていく。



そう打ち終えて、ブログを閉じた。


今日で今年も終わり。

明日からは新しい一年。


毎年、何も変わらないはずなのに

どうしてみんな年越しをあんなに騒ぐのか

不思議だった。


でも今なら少しその気持ちがわかる。


明日から自分の居場所で、

新しい生活が始まるんだもん。


今から寝よう。

きっと除夜の鐘がアラーム代わりに

わたしを起こしてくれるはず。


ベッドに横になり、うっすらと

明るくなりかけた窓に背を向けて

わたしは眠りについた。




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