表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

とある男の日記

作者: ととのえ
掲載日:2012/04/02


 お願いだ。どうか落ち着いて、彼の話を聞いてやってくれ。彼に罪はないのだから。

 

 彼は、ほんの少しの間違いと野心で間違いを犯してしまっただけなのだ。いや、そもそもそれを間違いと呼ぶ事すら間違いなのだ。

 彼に非は無い。寧ろ相手の方にあるのだ。大きな体をゆすって夫に腰掛ける彼の妻や、まるで軽蔑したような目でこちらを見る子供は、間違いなく彼を見下していた。彼に非は無いのだ。彼に非は無いのだ。

 彼を責めないでくれ。これは無意識下の、ごく当たり前な本能的欲求だったのだ。弱者が強者に対して恨みや怒りを覚えるのはこの世界の創り方からしてなんらおかしくなく、むしろ覚えないほうが異端と言えるだろう。

 お願いだ。どうか落ち着いて、私を手伝ってくれ。君は私の指示する通りにその荷物を運び出し、言われた所に運べば良いだけなのだから。

 私は後悔などしていない。寧ろ清々しい! 何しろこれで邪魔者はいなくなったのだ。私の邪魔をするものはいなくなったのだ。

 私に着せられる罪は無い。なぜなら私は何も神に背く行為などしてないからだ。今メシアの下に跪いて許しを請えと言われても、私の体からは一つも罪の証など出ないであろう!

 私を、恐れないでくれ。ああ、私を侮蔑の表情で見ていた子供達が今ではがたがたと体を震わせ、奥歯を鳴らしているではないか。そんなに青ざめないでくれ。そんな目で私を見ないでくれ。見ないでくれ、見るな、見るんじゃない! 私は何も悪くない、私は何も悪くないのだ! たかが、たかがそんなことではないか!


 

 ああ、子供達が逃げていく。追いかけなくては。あやさなくては。ああ、君はまだそこにいてくれ。その美しく安らかに眠っている妻に、優しく布団を被せてあげてくれ。

それを受け入れるか受け入れないかは当人の自由です。かしこ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ