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終章(6)




ふと、誰かの声が聞こえた気がして、カインは振り向いた。

青空とポピーの花が一面に咲いてるだけで、人はいない。

おかしいな、と思ってもう一度前を向くと、今度ははっきりと聞こえた。

「カイン!!」

振り向こうとするのと、背後から抱きつかれたのは同時だった。支えきれずに転ぶと、ポピーの花びらが散る。

「リズヴェル、痛いじゃないか!」

思わず怒ると、リズヴェルはころころ笑い声をあげた。

「あなたが悪いのよ。先にいっちゃうんだから!」

「ええ? ごめん」

「別にいいわ、許してあげる。」

少し偉そうにいうと、リズヴェルはさっきまで笑ってたのに、はあと大きなため息をついた。

「どうしたの」

ころころ変わるその表情が懐かしくて泣きそうになるのをこらえて、カインは聞いた。

「いやーソフィアに悪いなーと思って。私もカインもいなくなったらあの子、大丈夫かしら」

心配そうに言うリズヴェルに、カインは困った顔した。

「そうだな、君がここにいるということは、そうだよなあ」

困ったと頭をかくカインにリズヴェルはぎゅっと強く抱きしめた。

「うん、大丈夫よきっと」

「根拠は?」

「私の妹だからよ! あの子なら強いわ、大丈夫」

ふふふと笑うリズヴェルにつられてカインも笑った。

「だけど、あの子には辛い思いをさせたな」

「そうね。」

ポピーの花びらが風にさらわれて宙を舞うのを二人で見ながら、手を握って祈る。

残された者たちがどうか。幸せに暮らせますように。

しばらく祈ると、二人は同時にポピーの花の布団に寝転んだ。

「君ともう一度会うことができるとは思わなかったな」

「あら、死が例え私たちを離れさせようとしても、ずっと一緒にいるとプロポーズしたのはどこの誰かしら」

「・・・僕だよ! でもまさか君までこっちにくるとは思わなかったんだよ」

思わず目頭が熱くなり、目を隠すとリズヴェルがぎゅっと手を握る。

「やだ、あなた一人でいかすわけないでしょう。私のために頑張ってくれてありがとう」

「別に大したことないよ。リズこそ、ひとりぼっちでずっと戦ってたじゃないか」

「それはカインもでしょう。たくさん頑張ったんだもの。あとはゆっくり休みましょう」

「一緒に?」

「ええ、一緒に!」

手をどかし、目を開けるとリズヴェルが額にキスをしてくれた。カインもお返しに額にキスをすると二人向かいあわせで寝転ぶ。

「おやすみ、リズ」

「おやすみなさい、カイン」

爽やかな風が吹きポピーの花弁が揺れる。

甘い匂いに包まれて二人は硬く互いの手を握りながら永遠の眠りについた。



カーラの街の東側にある花畑に新しく墓が建てられた。男女の墓はいつしか花に埋もれて見えなくなるが、ある一つの言い伝えが残る。この花畑で告白すると永遠に結ばれる、と。

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