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序章 2

 

「俺の講義で二度寝するなんて良い度胸だなあ、インヴェルノ」

「ははは…すみません」

 素直に頭を下げるインヴェルノを斜に構えて、ふんと鼻をならす様は、鋭い目つきのお陰でより見る者に恐怖を与える。 

「俺の講義はそんなにつまらなかったか?」

 ぐりぐりと頭を撫で回し、最終的には鷲掴(わしづか)みにしての質問。

「そんなことないですよ!ただちょっと眠かっただけなんですよ」

「ちょおっと眠かっただけぇ?」

「ははははは」

 至近距離で唸る顔はまるで悪鬼の如く。アラノが見かねてロイを引き離してくれるまで、第二講義室での講義態度の説教が延々と続いていた。

 ◇◇◇


「で、何の用だった訳ですか」

 第二講義室を出て、東側の廊下を歩いていくロイに付いていきながらインは問う。

 普段はあまり人前に出ないインヴェルノだが、今日人が多い講義室のある魔法学院に来たのは、ロイから、こちらに来て欲しいという連絡があったからだ。普段は蓑虫の如く屋敷から一歩も出ないインヴェルノにしてみれば、講義に出る姿を見るのさえ珍しい。

「ああ」

 返事をしたきり、ただ黙々と廊下を進むロイはインヴェルノより背が小さい。インヴェルノは百六十センチなので、おそらく百五十センチぐらいだろう。以前、身長について尋ねたら問答無用で攻撃魔術を仕掛けられたので、正確にはわからない。

 眼鏡の奥にある鳶色の目と同じ色の髪は所々はねていて、ひどい癖毛のように見えるが半分は寝癖だ。

 先を行く、自分より少し小柄な背を見て、ふと横を見る。

 自分より頭二つ分高い、青年は眠たそうに後ろを付いてきている。

 黒い長い髪を後ろで一つにくくり、黒い服で身を包んだアラノは全体的にぽっかりそこに闇があるかのようだ。紅い瞳は、誰かが言うには血のように真っ赤で、この瞳にひたと睨まれれば、悪寒が背筋を這い、恐れ震えてしまうそうだ。

 インヴェルノには、そういう感覚がよく判らないが。

 何処が、そんなに怖いのだろうか。考えている内に、ロイは目的地に着いたみたいで、遅々とした足取りのインヴェルノ達を待っていた。

「図書館に何か用でも?」

 目の前にある重厚な造りの扉を前にして、ひたと動かないロイが黙っているので聞いてみると、こくんと頷いた。

 ロイは、狭く扉を開けるとするりと中へ入った。続いてアラノとインヴェルノも入ると、ロイはすでに奥へと進んでいた。

「何処いくんだ?」

 アラノが問うも何も言わず、すっと奥の方へ移動するロイを、慌てて追う。常から、いつもロイは説明も何もせず、結論だけを用意する。彼の講義は淡々と事実だけを述べており、受講者達にわかりやすく説明してやることはない。故に、難解な講義として、生徒達の間で定着している。

 本を読むスペースを通り抜け、本棚の(つら)なる端まで来てようやくロイは止まった。

 急に後ろを振り向いたロイの顔は、今まで見た中で最高と言えるほどの仏頂面だった。

「な、なに?」

「イン、アラノ」

 聞き取れるか怪しいほど小さな声で名前を呼ばれ、インヴェルノとアラノはロイの近くまで寄った。


「学院長より、お前達に依頼だ」


 差し出された封書を破ると、震える字面で、街の惨状を訴える市長の恐怖が書きつづられていた。



 

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