表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双子魔法師、家を買う  作者: こむぎそば
第二章 暁の探究者
46/46

第8話 探究者

「こんにちは」

「こんにちはー!」

「お二人とも、いらっしゃいませ」


 三日後、開店直後に訪れたヨルンに体当たりをくらって、エルノーはよろめいた。よほど楽しみにしていたらしい。突然走り出したかと思えばその場でジャンプをしてみたり、この間とは比べ物にならないほど元気な様子だ。


「先日はどうもありがとう。どんぐりのおかげかかなり体調が良さそうでね。いくつか買わせてもらおうと思っているんだ。もちろん薬も」


 落ち着きのない幼児をなだめながら、青年はニコニコと微笑んだ。その姿はまるで親子のようだ。エルノーが立ち入った話をしてもいいものか逡巡していると、意外にも青年の方から話を切り出してきた。


「失礼、この間は名前を名乗っていなかったね。僕はソルフェンという。この子は()のヨルンだよ。見た目は三歳だが本当は十九歳だ」


 エルノーとエリアが『そうだろうな』という顔をすると、ソルフェンは苦笑した。

 

「やはりバレていたね。父に君たちのことは聞いている。火事を鎮めたり子どもたちを魔物から救ってくれたそうだね。町の人達からとても信頼されていると。そんな君たちを信用して、僕も相談したいことがあるんだ。聞いてもらえるかな」


 *


「どうぞ。俺がブレンドしたお茶です。口に合えばいいんですが」


 話が長くなりそうだったため、エリアにはヨルンを連れてサロンに行ってもらっている。あそこには子どもたちが来た時のためにおもちゃを置いてあるので、しばらく遊んでいてくれるだろう。


「お気遣いありがとう。早速だが話をしていいかな。ヨルンを連れて行ってくれたのは助かった。怖い思いをしたのか、この話をしようとすると嫌がるんだ」


 ソルフェンは優雅な所作でハーブティーを一口飲むと一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐにまた微笑んで姿勢を正した。

 

「君は僕たちのことをどこまで知っている?」

「あまり知りません。ゴルドーさんの息子さんで、十歳から王都の学校に行っていたと。ソルフェンさんは今二十六歳くらいですかね? 兄弟で騎士か冒険者か傭兵か学者をやっているらしいとは聞きました」

「年齢は合っているが職業はどれも違う。僕たちは探究者(シーカー)だ」


 探究者――古代遺跡を専門にした探検家。


 この世界の文明は一度滅んだらしい。それが何年前のことかは諸説あるが、かつて存在した文明は今よりも遥かに高度な技術を有していたという。未だ世界各地にその名残があり、その古代文明の遺跡探索を専門にしているのが探究者と呼ばれる者たちだ。

 遺跡には一攫千金を夢見る冒険者やゴロツキなども良く訪れるが、探究者はそれらとは一線を画す存在だ。冒険者などは価値のある遺物が目当てであり、宝飾品や武具、魔法道具など、見つけたものは手当たり次第持って帰り売ってしまう。見つけた場所や状況が不明瞭なことが多く、また一揃えであったものをバラバラに売ってしまうこともあり、情報が散逸してしまう。酷い時には無理に壁などを破壊してしまうこともあり、永遠に失われてしまったものも数多くあるのだ。

 それに対して探究者は遺跡の用途を調べ、図面を書き、遺物に対してもその場でわかる限り細かく記録し、そしてその情報を研究者に売るのだ。当然その情報は非常に高額になるが、それでも遺跡を見つけ下調べをしてくれるというのはそれだけの価値がある。

 エルノーも何度か探究者と会ったことがある。遺跡探索の際に戦闘要員、また魔法罠解除要員として招集されたことがあり、最初にその遺跡を見つけた探究者が案内係として同行していた。壮年の男性だったが、確かな知性と引き締まった肉体、そして魔法の素養を持っていたことを覚えている。探究者となるには古代文明への深い造詣が必要なのはもちろん、魔物の巣窟になっていることも珍しくないため、戦闘能力が必須なのである。


「探究者……なるほど」


 エルノーは改めて目の前の男を観察した。それなりに裕福そうで余裕があるが、上流階級である騎士とは雰囲気が違う。知的だが学者ほど不健康ではなく、しっかりとした筋肉がついている。かといって傭兵や冒険者のような荒々しさはない。言われてみれば探究者というのがとてもしっくりきた。ただし、ソルフェンからは魔力がほとんど感じられなかった。


「探究者を知っているか。さすが魔法師様だ。説明の手間が省けて助かるよ」

「あなたたちが持ってくる情報は貴重ですから、魔法師をやっていれば関わる機会はありますね。――ということはヨルンくんが子どもの姿になってしまったのは古代文明絡みということですか」

「そうだね。そういうことになる」


 ソルフェンは少し迷うように目を伏せた。

 

「一応、知り合いの魔法師には一度見てもらったんだけどね。その時は何もわからなかったから、自分でどうにかしようと思っていたんだ。遺跡の罠であるのなら、もっとしっかり調べれば解決の糸口が掴めるかもしれないとね。だが幼児を連れて動き回るのは想像以上に大変だったものだから、ひとまず実家に預けようと帰ってきたんだ」


 しかしエルノーに魔力が減っていることを指摘され、魔法師の協力が必要不可欠だと考え直したのだそうだ。

 

「ヨルンはおそらく、古代の呪いを受けている」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ