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双子魔法師、家を買う  作者: こむぎそば
第二章 暁の探究者
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第7話 薬効と副作用

「という話を聞いたんだけど」

「なるほど。ややこしい事情がありそうだとは思ったけど、思った以上に深刻な状況なのかもね」


 家に帰ったあと、エリアはエルノーにソルフェンと弟の話をした。


「もっと教えてくれたら一緒に対策考えるのにねー!」

「ソルフェンさんはヨルンくんを本気で心配してるようだったし、他の魔法師に相談してる可能性はあるよ。もしかしたら高額な相談料を取られて警戒してるのかも」

「あー、ありえる……。魔法師の印象悪くなるからやめてほしいよねー! 相談だけだったら無料ですって言ってみたら話してくれるかな」


 どんぐりランプの件もあり、エリアとエルノー個人に対しては恐らくそれほど悪印象は持たれていないだろう。次に来店した際に少し話してみることにする。


「とにかく約束の薬は用意しておかないとな。詳細がわからない以上、単純に魔力を体の中に入れて巡らせるタイプのものがいいか。吸収はゆっくりめにしよう」

「取り込めないのか出ていってるのか、そこがわかんないよねぇ」


 そもそも普通に生活していて魔力が無くなるということはほとんど無いのだ。魔力を自由に動かせる魔法師であれば、使い過ぎてしまうということも無くはないのだが。魔力消費が激しい大魔法を行使できるような魔法師であれば緊急用の強い薬を用意していることが多いが、一般人向けのレシピは出回っていない。ましてや体の弱い子どもとなると更に難しい。


「定番は星心(せいしん)の火花だけど」

「絶っっ対だめ! 小さい子にあんなの飲ませたら死んじゃうよ! あたしまだ覚えてるもん、体がバラバラになるかと思った!」

「俺たちが飲まされたのって六歳の時だっけ。量を減らせばいいっていうものじゃないからなぁ、あれは」


 まだ魔力制御が下手だった幼い頃、二人はどんどん膨れ上がる共鳴魔法の魔力を抑えきれずに暴発させたことがあった。生命活動に支障が出るほど体内魔力が減ってしまったため仕方がないことではあったとはいえ、上級魔法師用の薬を飲まされた二人は三日三晩苦しむ羽目になったのだ。

 主成分の『星心の火花』は大陸の中央にほど近いグロノスター渓谷の奥深く、スターリングホールと呼ばれる大穴の底にある、超巨大魔水晶から漏れ出た魔力が結晶化したものである。いわば魔力そのものであり、即効性はあるのだが制御に失敗すれば逆に体を破壊しかねない。あの時の内側から焼かれるような、全身がバチバチと弾けるような苦しみは二度と経験したくない苦い思い出であり、上級魔法師の仲間入りを果たした今であってもできれば飲みたくない薬だ。

 そもそも暴発したのは『塔』の魔法師の実験に付き合わされたせいである。無理をさせておいてまともな薬も用意しない奴らのことを嫌いになるのは当然のことだろう。最近めっきり忘れていた恨みを思い出しかけて、エルノーはかぶりを振った。


「それは論外として。そうなると妖精の鱗粉かな。量の調整もしやすいし」

「それもあんまり良くないけどね。幻覚出ちゃうでしょ。しかもイヤーな幻覚ばっかり見せられるんだよね……」

「幻覚対抗に曇鏡花(どんきょうか)のつぼみは必須だね。でもあれ、変な臭いするんだよなぁ。ちゃんと飲んでくれるかどうか」


 妖精関係の素材は優秀ではあるのだが、総じて幻覚とセットなのだ。曇鏡花のつぼみを入れればかなり緩和されるが、埃っぽい臭いがするのが残念なところである。大人であれば我慢できる程度だが、子どもとなると吐き出してしまう可能性もあるだろう。

 

「いっそのこと眠らせちゃうっていうのは? 夢喰い草入れて夢も見ない状態にしちゃえばぐっすりじゃない?」

「そうするともし別な副作用が出た時に気づけない可能性があって怖いな。小さい子は特にちょっとした異変が命にかかわるし」

「じゃあ火甘藻(かかんも)入れるのはどう?」

「甘いのはいいけど、臭いはどうしようもないんじゃないかな……。でも体を温める効果あるし入れるのは賛成だよ。ヨルンくん、どんぐりランプを持った時『あったかい』って言ってたよね。寒いんじゃないかな」

「魔力が減ると寒い気がするの、わかるなぁ! 別に体温が下がってるわけじゃないのに、なんか寒いんだよ。不思議」

「逆に過剰摂取すると熱くなるから、魔力って熱いのかも」


 その後も手持ちの素材の中から効果的な組み合わせを探したが、なかなか良い案は浮かばなかった。

 

「あーあ、軽く引き受けたけどこんなに難しいなんて」


 行き詰まってしまったエルノーは、とうとう机に突っ伏した。王宮魔法師だった頃はとにかく効果を上げることを求められたが、今回の依頼は逆に抑えなくてはならない。町の魔法師としての経験値が圧倒的に不足していることを痛感する。

 

「とにかく試作してみようよ。それから足りないもの考えよ! あたしも手伝うから!」

「うん……。アルマさんにも子どもに飲ませるコツとか注意点、聞いてみようかな。俺たちよりよっぽど詳しいだろうし」


 長年町の薬屋を営み、自身も子を持つ親であるアルマ。好奇心旺盛な彼女は魔法薬にも興味津々で、訪ねていくととても親切にしてくれる良い先輩だ。

 完成が見えない不安を抱えながらも、ひとまず調薬部屋へと向かうエルノーだった。

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