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双子魔法師、家を買う  作者: こむぎそば
第二章 暁の探究者
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第4話 小さな男の子

「え、君だぁれ?」


 慌ててラップサンドを紙で包み直し、手を拭く。男の子だろうか、短い金髪がところどころ跳ねている。良く遊びに来るカロンたちよりももっと幼い子だ。


「見かけない子だね。この人混みで迷子になっちゃったのかな」

「お名前は? パパとママはどこ?」


 そう声をかけると男の子は顔をあげ、アイスブルーの瞳でエリアを見つめた。


「だっこ……」

「へ?」


 抱っこ抱っことせがむ幼児に困惑しつつも、エリアは塀を降りて男の子の脇に手を添えた。今まで小さな子と関わる機会が無く、見様見真似で持ち上げる。


「重っ……」


 男の子はエリアの腰ほどの身長だが、それほど筋力のないエリアにとってはかなりの重さである。世の中のお母様方はなぜあんなに軽々と持ち上げているのか不思議に思いながらも、なんとか抱っこすることに成功した。


「今広場に戻っても親を探すのは難しそうだな」

「どうしよう。とりあえず役場に行ってみる? どこの子か知ってるかも」


 首にすがりついて離さない男の子を必死に支えつつどう対応したものか相談していると、「ヨルン!」と呼ぶ声が聞こえた。目を向けると、男の子と同じ金髪にアイスブルーの瞳の青年が駆け寄ってきた。


「勝手に走っていかないでくれ。君たちは魔法師様か? うちの子がすまない。ほらヨルン、こっちにおいで」

「や!」


 父親と思しき青年が手を広げるが、男の子は嫌がってますますエリアにべったりと抱きついた。


「参ったな。ヨルンは魔法師様が大好きでね、こうなると聞かないんだ」

「もうちょっと抱っこしてようか? あたしはまだ大丈夫だし」

「女性に抱きつくのは良くない。ヨルン、せめてこちらのお兄さんに抱っこしてもらいなさい」

「俺!?」


 突然水を向けられて困惑するエルノーに構わず、ヨルンはあっさりと手を広げた。


「ほんとに魔法師なら誰でもいいんだ……」


 エリアは何とも言えない気持ちになりながらもエルノーにヨルンを渡したのだが。


「重いっ!」


 エリア以上に腕力のないエルノーは無事に潰れたのだった。


 *


 エリアは塀に腰掛けたエルノーの膝に乗ってご機嫌なヨルンへと話しかけた。

 

「ヨルンくんは何歳なの?」

「じゅうきゅうさい!」

「え?」


 予想していなかった返答に唖然としていると、青年が慌てて訂正する。

 

「ヨルン、三歳だって言っているだろう?」

「おれ、じゅうきゅうさいー!」


 両方の手のひらをめいっぱい広げムキになって主張するヨルンに、エルノーはふと魔力の()()()を感じた。


「あれ、君……」

「エルノー? どうかした?」

「いや、ちょっと……。ヨルンくんの魔力を見てもいいでしょうか」

「魔力を? まぁ、構わないが……。何かあるのだろうか」


 突然の提案に不安そうな青年を横目に、集中して魔力の気配を探る。とてもか弱い魔力だ。全ての人が魔力を持つが、その量は個人差がとても大きい。エルノーたちのように膨大な魔力を持つ者もいれば、ほとんど感じられないくらい少ない者もいる。なので量自体は問題ないのだが――。


「器に対して魔力が少なすぎる。枯渇状態です。魔法師にくっつきたがるのは無意識に魔力を求めているからかも」

「なんだって!? ヨルン、そうなのか?」

「わかんない……」

「訓練した魔法師でもなければ魔力量や流れを見るのは難しいですからね……。本人も気づかないことは多いんですよ」


 見たところヨルンはもともとそれなりに魔力がありそうだった。魔法師になれるほどではないが、練習すれば基礎魔法の一つくらいは使えるようになるかもしれない。それがほとんど無くなっているのだから体は相当につらいはずだ。


「いつ頃からこの状態なんだろう。体調不良を訴えることはありませんでしたか?」

「そうだな……随分前から元気の無い日が多かった。薬を飲ませたりもしたのだが改善しなくてね。まさか魔力のせいだったとは」


 青年は青い顔をしながらヨルンの頭を撫でた。余程心配していたのだろう。

 

「魔法薬には魔力を回復させるものがあるというが、それを飲ませることはできないだろうか」

「今手持ちのものは自分用なので効果が強すぎますね。数日待っていただければもっと薬効を弱めたものを用意することはできますが……。ただ、あの薬は本当に一時的なものだし、体に負担がかかるので常用はできません。原因を取り除かないと」

「……ひとまず緊急用にいくつか用意してもらえないだろうか。言い値で買おう。原因は……どうにかするつもりだ」


 思い当たるものがあるようだったが、言葉を濁したためそれ以上の追求はしない。

 

「わかりました。では三日後以降に店まで取りに来てください。場所はわかりますか?」

「丘の上の屋敷だろう? 豪商の別荘だったという、あの。噂には聞いているよ」


 これ以上時間を取らせるのは悪いと思ったのか、青年はヨルンに「そろそろ帰ろう」と声をかけた。だがヨルンはエルノーにべったりとしがみついて離さない。

 困り果てていると、静かに成り行きを見守っていたエリアがポケットをごそごそと漁りだした。

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