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双子魔法師、家を買う  作者: こむぎそば
第一章 新しい暮らし
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第27話 子どもたちの噂

 ここ数日、レストの町はすっきりしない天気が続いていた。大雨にはならないものの、こうも降ったり止んだりを繰り返されると予定を立てるのが難しい。

 

 魔法の杖の使用感はもう試してある。やはり杖があったほうが魔力の収束が速い。以前使っていた長い(スタッフ)と比べても遜色はないように思えた。

 魔石は緑を使うことにした。二人の魔力と最も相性が良いのは黒魔石だが、サーシャが緑の方が似合うと言ったからだ。サーシャはきっと見た目の話をしたのだろうが、二人としては何だかそれがとても嬉しかった。

 飾り用の穴には、エリアは髪を結ぶ用に持っていたネイビーのベルベットリボンを、エルノーはそこら辺にあった麻紐を通した。ひとまずこれで見分けはつくだろう。


 杖が完成し、緊急用の強力な魔法薬も用意してある。現状でも森に入ることは可能なのだが、ただでさえ薄暗い森の中は魔物の領域(テリトリー)だ。できるだけ明るく天気の良い日を狙いたい。そんなわけで二人はしばらく家の中でできる仕事をのんびりとこなしていた。


 *

 

「エルノーにいちゃんー。こっちの部屋みていい?」

「いいけど、なんにもないよ」

「わ、階段の部屋だ! のぼっていい?」

「その階段使ってないからホコリすごいんじゃない? あんまり走り回らないでー!」


 しとしとと雨が降る日、レプティス魔法店は小さなお客様たちで賑わっていた。雨で外へ遊びに行けず、暇を持て余した子どもたちが遊びに来たのだ。市場で買い出しをしていたところ、カロン率いる少年少女たちにせがまれて魔導車の荷台に乗せてきた。カロンはちゃんと約束を守り、子どもだけで店まで歩いてくることはなくなった。ならばこちらも約束を守らなくてはならない。幸い急ぎの仕事は無く、雨の日は来客自体がほとんど無いため、こうして子どもたちと一緒に家の中を探検して回っているというわけだ。わんぱくな子たちだが『入ってはいけない部屋』には入らない分別はあるので、ある程度自由にさせている。


「こら、カロン! 魔法師さまに迷惑かけちゃダメってお母さんに言われたでしょ?」

「かけてねーし! なんでねえちゃんまでついてきたんだよー!」

「あんたたちの監視のために決まってるじゃない!」


 カロンの姉、ニニも一緒に来たのだが、十歳の少女に年少の子どもたち五人の面倒を見ろというのは流石に荷が重いだろう。全く言うことを聞く気配がない。エリアも子どもたちの無限の体力についていけなくなり、助け舟を出すことにした。


「そろそろおやつにしない? 食べる人はサロンにあつまれー!」

「「やったー!」」


 一階の大きな窓のある部屋にみんなでぞろぞろと向かう。日当たりが良すぎて倉庫には向かず持て余していたのだが、子どもたちが遊びに来るようになったので休憩できるようにしたのだ。中央に敷いた大きめのラグに靴を脱いで上がり、テーブルに買ってきたクッキーを出す。子どもたちが我先にと手を伸ばすのを眺めながら、最近町であった出来事を聞いてみる。


「えっとねー、このまえスゲーでかいサメがアミにひっかかってやぶれた! それでかーちゃんキゲンわるいんだー」

「昨日山道でがけ崩れがあったんだって。商人の人たちも使う道だから、食材か何かが入ってこないってお父さんが言ってた。兵士の人たちが直しに行くんだって」

「最近つけもの屋さんから変なにおいするからなんだろーと思って行ってみたらね、なんかへんなもの作ってた! 外国から来たおよめさんが作ってるんだってー。味見したらしょっぱかった」


 子どもたちがそれぞれ思い思いの『最近のニュース』を教えてくれる。内容は様々だが、子どもだからと侮ってはいけない。案外子どもは大人たちの話を聞いているものなのだ。町の中心から離れて暮らしているエリアたちにとっては大事な情報源である。


「そういえばメイガスさまたち、ゴルドーおじさんしってる?」

「ゴルドーさん? 商工会長さんかな?」


 商工会長の少し出っ張った腹を思い浮かべる。確かそんな名前だったはずだ。


「たぶんそう! そこの息子がもうすぐ帰ってきそうなんだってー! 騎士さまなんだってさ!」

「えー? 傭兵じゃなかった?」

「冒険者だとおもってた!」

「と、とにかく、強いんだって! オレが行ってる道場で修行してたらしいよ! オレも強くなりてー!」

「カイは道場通えていいよなー。オレだって騎士になりたいのに」

「キールんちは漁師じゃん。剣習ってどうすんだよ」

「漁師が剣持ってちゃいけねーのかよ! カイんちだって石工じゃん!」

「二人とも座って。俺のクッキーあげるよ」


 ヒートアップしはじめたカイとキールをなだめる。こればかりは家庭の事情によるため、口出しはできない。クッキーを食べて落ち着いたのか、キールがふとポケットを探りだした。


「そういえばオレ、エミル兄ちゃんにクズ魔石もらったんだった! 買って!」

「いいよ、見せて」


 エルノーが布を貼ったトレーを差し出すと、キールはそっと透明な石を一つ乗せた。


「へえ、結構大きいね」

「ほんとだ。不純物も少ないしいいね! いくらにする?」

「これだったら、そうだな……1600イェールかな」

「やった!」


 親指の先ほどもあるその石は、クズ魔石としてはかなり上等なものだった。潰すには惜しくなる大きさだ。


「どこで見つけたんだい? 魚の腹からはこんなサイズは出てこないと思うけど」

「あー、えーっと……わかんない。エミル兄ちゃんも最近父ちゃんと船に乗ってるから、サメから出てきたのかも!」


 急に歯切れが悪くなったキールを訝しく思うものの、大型の海洋生物から出てきたのならあり得る大きさだ。


 そうこうしているうちに遊び疲れた子どもたちがウトウトしはじめたので、慌てて起こして魔導車の荷台に押し込み、家まで送り届けた。


 *


 その日の夜遅く、そろそろ寝ようかと準備をしていると、不意に誰かが敷地に入ったことを知らせるチャイムが鳴り響いた。

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