表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/30

第二十二話 闇と光の闘い

✦✧ 第四章『光に照らされた道』のあらすじ ✧✦


王城で、光と闇が激突する。

そしてアリアは運命の選択を迫られ、揺るぎない想いを胸に光に向かう──


* * * * *


【10/21完結予定】

挿絵(By みてみん)

※ 作品のイメージイラストです。

 白竜と黒竜が、崩れかけた謁見の間の上空で火花を散らすように激突した。

 牙と爪がぶつかり、甲高い金属音のような音が響く。強靭な尾が石床を薙ぎ、瓦礫が宙を舞った。


 ヘリオスはアリアの存在を背に感じながら、爪でガーネットの顎を弾き飛ばした。

 黒竜はすぐに体勢を立て直し、唸り声をあげて飛びかかってくる。二匹の巨体が空中で絡み合い、天井を突き破り、青空の下へと飛び出した。


 陽光が、白と黒の鱗をぎらぎらと照らし出す。

 空を裂く轟音、吹き荒れる突風に、結界の中で見守るアリアは思わず両手を組んだ。


(ヘリオス……! 負けないで──!)


 祈るように呟いた瞬間、ヘリオスが黒竜の咆哮を真正面から浴び、後方へ吹き飛ばされる。

 翼で体勢を立て直し、岩壁に激突する寸前で急旋回した。地面すれすれを滑るように飛び、ガーネットの腹をかすめる一撃を放つ。黒い鱗が裂け、血飛沫が舞った。


「グルァァッ!」


 ガーネットが激昂して炎を吐く。

 真紅の炎が空を焼き、謁見の間の瓦礫が再び崩れ落ちた。だが、ヘリオスも負けじと口を開き、眩い白炎を吐き出す。光と闇、二つの炎がぶつかり合い、空中で弾けた。


 轟音と共に衝撃波が四方へ広がり、アリアの結界がきしむ。

 眩しさに目を細めたアリアの頬を、熱風がかすめた。

 視線の先で戦うヘリオスの白い身体の至る所から、鮮血が滲んでいる。


(癒さないと……!)


 アリアが思わず結界に手をかけた瞬間、ヘリオスの低い声が脳裏に響いた。


『動くな、アリア──!』


 その声に胸が跳ね、結界の中で膝をつく。

 この中で信じて待つしかないのだと、強く唇を噛んだ。


 やがて、白い影が黒竜の首筋に食らいついた。

 苦悶の咆哮をあげたガーネットが、地面に叩きつけられる。

 謁見の間の壁が砕け、王家の紋章入りの紅い幕が落ち、土煙が上がった。


 ヘリオスは大きく息を吐き、ガーネットを押さえ込むと、黄金の瞳を細めた。


(ガーネット……もう、終わりにしよう)


 かつては、同じ空を翔けた仲間。

 だが今は、アリアを脅かす存在でしかない。


 最後の力を振り絞り、白竜の爪が黒い鱗を貫いた。


「ヘリオ、ド……ル……」


 苦悶の表情を浮かべる黒竜の口から掠れた声が漏れ、光が弾ける。

 ガーネットの漆黒の巨体は淡く輝き、静かに崩れ落ちるように消えていった。

 残ったのは、風に舞う黒い燐光だけだった。

 仲間だった彼女との記憶が、ヘリオスの胸に痛みを走らせた。


「ガーネット、すまない……」


 ヘリオスは最後にその名を呼ぶと、静かに瞼を閉じ、しばしその場に立ち尽くす。


(ヘリオス……)


 全てを見つめていたアリアの瞳から、涙が零れる。


 ヘリオスはよろめきながら謁見の間へと降り立つと、人の姿に戻る。


 ──崩れ落ちた天井の隙間から青空が覗いている。

 陽光が瓦礫の間から差し込み、粉塵の舞う空間を淡く照らしていた。


 ヘリオスは深く傷ついた体を引きずり、結界の中にいるアリアのもとへ歩み寄る。

 震えているアリアを優しい眼差しで見つめると、「俺は、大丈夫だ……怪我はないか?」と口にする。


 結界が解けると同時に、アリアが駆け寄り、ふらついている彼の体を支えた。


「ヘリオス!」


 膝をついたヘリオスの頬に触れると、アリアは震える手で祈り、癒しの力を込める。

 淡い光が、彼の傷口を次々に塞いでいく。

 だが、力を使うアリアの様子も変わっていった。


「アリア、やめろ……!」


 どんどん青褪めていくアリアを制するヘリオス。

 だが、制止の声も聞かず、アリアは最後まで祈り続ける。

 ヘリオスの体中に刻まれていた傷は、全て塞がった。


「もう、これで大丈夫ね……」


 そう言って微笑んだ彼女の体から力が抜けた。


「アリア!」


 ヘリオスは慌てて彼女を抱きとめる。

 呼吸はある──だが意識がない。

 狼狽した金の瞳が、崩れた謁見の間を彷徨った。


 その時、瓦礫の影の扉が開き、人影が現れる。

 ジェイドだった。


「アリア! ヘリオス、大丈夫か……!?」 


「ジェイド! 助けてくれ、アリアが……!」


 ヘリオスは腕の中のアリアを強く抱き締め、ジェイドに向かって大声で叫んだ。


 闇は去った──だが、ぐったりとして動かないアリアを抱いたヘリオスは、絶望の表情を浮かべていた。

 力なく瞼を閉じ、ヘリオスの腕に抱かれるアリア。その銀の髪が、崩れた謁見の間を吹き抜ける風に揺れていた。

次回、第二十三話「光に包まれて」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ