第7話「で、どうだったの?」
第7話
「で、どうだったの?」
「なんとか今日はお持ちすることが出来ました。こちらです」
骨董屋が持ってきたものは一目で判るほど古めかしい本だった。タイトルを見ても祭では何語で書かれているのかさえ判らない書物だ。
「本物なのでしょうね」
「それはもう。私がお嬢様に偽物をお持ちしたことがありましたか?」
確かに骨董屋が持ってくるものは高価だったがちゃんと全て本物だった。
「ただ」
「ただ?」
「この書物を読み解ける者がおりません」
「なんですって。それでは手に入れた書物が役に立たないではありませんか」
「それは確かにそうなのですが実は解読できる人材も今少しで手配できる目途が立っております。本当は書物と一緒にと思っておりましたが、お急ぎだと申されましたので取り急ぎ書物だけでもとお持ちした次第です」
確かに骨董屋が言っていたよりも早く書物は持ってきていた。
「で、その人材とはいつどこで会えるというのです?」
「来週にでもお屋敷に連れて参ります。いつお戻りになられますか?」
「いえ、私はまだ暫らくはここに居りますので来月の私の誕生会に連れて来なさい。お屋敷でパーティーをする予定ですから。二人分の招待状を送っておきます」
「承りました。ではこの書物もその時まで」
「いいえ、これは貰っておきます。私なりに調べたいとこもありますから。用は済みました、もう下がりなさい」
骨董屋は商売に来ているだけで西条家の家臣ではない。だが伶佳からすると同じというか区別がついていなかった。
次の日から毎夜、太田は新鮮な魚介類を持ってきた。いずれもお代は要らないと受け取らなかった。
太田が料理も出来るというので試しに台所に立たせると見事な腕前で魚を捌いていく。
「器用なものね。料理人でもやっていたの?」
「いいえお嬢様、あるお方のお仕えしているうちに見様見真似で覚えただけです」
「なんだ誰かに仕えているのね」
伶佳は場合によっては西条家に太田を召し抱えようと思い始めていたところだったのだ。
「申し訳ありません、お伝えしておりませんでしたね。私はその方に付いて今ここに来ているのです。普段は東京のお屋敷でお仕えしております」
「東京にお住まいなのね。ではもう少ししたら私の誕生パーティーが有るので、そこに来てくれないかしら」
「お嬢様がお望みであれば都合を付けてお伺いしましょう。旦那様にもお目に掛りたいことですし」
「祭、太田さんにも招待状をお出ししてちょうだい」
祭が少し顔を歪めながら太田から連絡先を聞いていた。




