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第6話「祭、祭ってば」

第6話


「祭、祭ってば」


「はい、お嬢様、いかがなさいましたか?」


「どういうことよ、いつまで経っても来ないじゃない」


「それを祭に言われましても。お電話でもされてはどうですか?」


「こちらに来ている筈なんだから事務所の電話に出る訳ないじゃない。もう三回も掛けたわ、でも出ないのよ」




 次の日。ジリジリジリ。


「お嬢様、お客様の様です」


 祭が出迎えると知らない男だった。


「どちら様でしょう?」


「こちらのお嬢様に頼まれて魚を持って参りました、太田と申します」


 客は骨董屋ではなく太田だった。


「ああ、太田さんね、本当に持ってきてくれたのですね。祭、お代をお支払いして」


「いえ、お嬢様、お代は結構ですよ。今日はお出会いした記念です。旦那様にもお世話になりましたので」


「ではお言葉に甘えて今日のところはいただいておきます。次はちゃんとお代を受取ってくださいね」


 祭は太田の顔を見る伶佳の頬が少し赤らんでいるのを見逃さなかった。伶佳は威厳のある父の姿を異性に求めている。反して頼りない兄、秀成のような軟弱者は毛嫌いしていた。




 ジリジリジリ。


 太田がまだ玄関先に居る時に、今度は骨董屋がやって来た。


「これは先客がいらっしゃいましたか」


「いいのよ、待っていたわ、中に入ってちょうだい」


 祭は骨董屋を中に案内する。太田の対応を伶佳に任せて、ということになってしまったが仕方ない。




 伶佳は太田を送り出して直ぐに部屋へと入ってきた。


「お嬢様、お客様は」


「お帰りになりました。祭、次にあの方が来られた時には失礼のないようにお願いするわ」


 伶佳が珍しく命令ではなく頼みごとを口にした。めったに無いことだった。



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