第24話 解読できる者、力ある者。
解読できる者。力ある者。その二つは両立する。
『無名祭祀書』のように本そのものが力を持った稀覯書は、それを解読できるような力を持った人間を取り込んでしまうことが多々ある。
但し普通の人間はその対象ではない。力のない人間は稀覯書も取り込んだりしないのだ。
「京極、お前でもダメかもしれない。私は絶対に無理だ。船の様な閉ざされた空間に長時間一緒に居ることは出来ない」
十分に封印を施し、力を持たない者に守らせて運ぶしかない。
稀覯書を解読するには一定時間解読してから間を空けてまた行えば問題は無い。ある程度離れることが必要なのだ。ずっと閉ざされた空間で一緒に居ることが出来ない。
船便では無理な話だった。そこまで大きな船は現存しない。
ある日突然いなくなって稀覯書だけが残されていた、なんて話は羅都の周りでは有り触れた話だった。
なんとか『無名祭祀書』を日本に持ち込むことに成功し羅都本人も初めて母国である日本に着いたのだった。
佐島についてから解読は進んでいた。東京の西条家にあった蔵書と佐島にある蔵書が補完しあっていることが判ってからは特に早かった。
「あと少し、あと少しだと思ってよいのですね?」
「その通りです。あと少しで完全解読に到ることが出来ますでしょう」
羅都には確信があった。『無名祭祀書』を扱ったのは初めてのことだったが、他の稀覯書の解読に成功した時のことを考えると、その予感は間違ってはいないと思った。
旧支配者の一柱の封印を解く方法。整えなければならない状況。用意しなければならない道具や呪物。詠唱しなければならない呪文。そして一番大切な正しい星辰の位置。その時期。
全てが明らかとなった時、全てが揃った時、旧支配者は封印を解かれその姿を現すだろう。
それがこの地球に、この宇宙にどんな結果を齎せるのか、羅都には判らない。西条家の、西条伶佳の目的も本当はよく判っていない。
ただ単純に自らが眷属として仕えている旧支配者の封印が解かれることを望んでいるのか。それとも封印が解かれた後の世界に思いを馳せているのか。
羅都が稀覯書の解読作業をしていることを神父は止めなかった。寧ろ推奨している。ということは神父の意に沿った行動をとっていることになる。
神父には恩があった。その期待に応えたいという思いも強かった。
「事前に準備できる物は用意しておくとしましょう」
伶佳は祭に命じて今までに判明している物を用意させるため先に東京の屋敷へと戻した。
「祭が用意できない物はいくつかありそうですね」
「確かに少し難しいかも知れません。京極に手伝わせるとしましょう」
羅都は直ぐに京極に連絡を入れる。
「少し時間をくれ」
珍しく京極が消極的な声で言う。




