第21話 無名羅都は自分の存在を疑っていた。
無名羅都は自分の存在を疑っていた。
なぜ自分は生まれて来たのか、その答えを探していたのだ。
物心ついた時には米国ロサンゼルスに居た。
なぜ自分がそこに居るのか、判らなかったし知らなかった。
両親は気が付けは居なかった。少なく居も両親と呼べる人は居なかった。
生きた行くうえで必要なことは全部やった。
勿論不法なことや暴力的なことは日常茶飯事だった。
名前も無かった。ミンクスと呼ばれていた。女装させようとする大人が多かった。少年にしては優しい顔をしていたからだろう。
ある日、目の前に黒い靄のようなものが突然現れた。それは人の形になっていった。
「なんだ?」
「お前がミンクスか?」
人型の黒い塊から声がした。
「だれだ?」
とても人間とは思えなかったが声を発しているのだ、意思の疎通はできるのだろう思った。少なくとも相手が気になるので逃げようとは思わなかった。
「ミンクスだったらどうするんだ?」
「付いて来い」
影はそう言うと動き出した。さっきより、より人間の形をしている。
彼は付いて行くことにした。命の危険が迫っている時は肌感覚で判るように普段から感覚は研ぎ澄まされている。その感覚からしても命の危険が無いと判断していた。
影の目的に興味があった。命を奪う目的であれば、あの影であれば簡単なことだろうとも思った。それが付いて来いというのだ、逆らう事の方がデメリットが多いと思った。
影に付いて行くと古びた教会に入って行った。古びた教会だった。彼には何教の教会なのか、判断が付かなかった。字が読めなかったのだ。
中に入ると中央に通れる通路があり、その両側に椅子が並んでいる。礼拝堂と言うやつだろう。
正面にはどこかで見たことのある、人が十字架に張り付けられている像は無かった。
彼はそこで暮らし始めた。




