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第20話「これは素晴らしい」

「これは素晴らしい」


 無名羅都は驚いた。


 西条家の蔵書も素晴らしかったが、ここ佐島の別荘の蔵書も勝るとも劣らないものだった。


 そして佐島には東京の屋敷には無い物が収められているのだ。


「お屋敷と言い、ここといい何故こんなにも素晴らしい蔵書が収められているのですか?」


「あなたのお友達のお陰です。彼が古今東西の希覯書を私に齎せてくれるのです。その中でもとびっきりがあなたが探してくれた『無名祭祀書』ですけれど」


 世界中の希覯書は好事家による蒐集を始め、様々な組織から求められている。


 原書となると奪い合いになってしまう事もあった。


 その奪い合いで命を落とすものも多い。


 稀覯書ハンターとも言うべき者たちには自然発生したネットワークがあった。


 そのネットワークを駆使して依頼人の求める稀覯書を用意するのが彼らの仕事だった。


 無名の友人で西条家に元々出入れしていた京極はネットワークの古参で、ある特殊な希覯書を探すことに長けていた。


 特殊と言うのは今回の『無名祭祀書』のように架空の書物として認識されることが多い、ある神話関連の希覯書が特に特殊だったからだ。


 無名は京極の米国での情報源として抜きんでていた。


 無名は稀覯書ネットワークには差異化していない。


 いつも独自のルートで稀覯書を探し出してしまうのだ。


 ただ無名は普段連絡か取れないとこが多かった。


 今回の様に日本に来たり長期滞在して機構書の解読に携わることなど普段であれば考えられなかった。


 京極からのオーダーができれば『ネクロノミコン』、『無名祭祀書』でも可。但し解読できる人物とセットで、というものだった。


 稀覯書を蒐集したい、というのではなくそれを解読したい、ということであれば何かの目的のためにその希覯書を使いたい、ということだろう。


 無名は少しその辺りの事情を知りたかったので今回日本まで来て解読の手伝いをする気になったのだ。


 日本に来てみるとやはり『無名祭祀書』を求めた理由は旧支配者の封印を解きたい、ということだった。


 西条家は旧支配者、若しくはその眷属の末裔、というところだろう。


「お屋敷の蔵書とここの物を併せると相当な量になります。きっと解読も一気に進むでしょう」

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