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第2話 そして、時は渡る。

 そして、時は渡る。大正の御代、華族の一員であり旧摂家にも連なる西条家の当代の一人娘西条伶佳の十八の誕生日のまであと二月となっていた。


「伶佳お嬢様、例のお客様がお見えです」


 客は元々伶佳から伝えられていたので直ぐに通された。


「よろしいのですか?」


 女中頭のまつり祥子は伶佳が幼いころから仕えており今では女中頭まで上り詰めている。


「いいと言っているでしょう。祭はいちいち煩いのよ」


 伶佳の我が儘はいつものことだったが今日の客は特別だった。胡散臭いこと、この上ない。何やら古い書物や使い方も判らないガラクタを売りに来ているのだ。それらはどれも目が飛び出るほど高額だった。


「伶佳お嬢様、いつも御贔屓にしていただきありがとうございます」


 客の骨董屋はまだ若い。何代も続く骨董屋の若旦那風ではあったが、その目利きは業界でも噂になる程だった。特に誰も手に入れる事かできない物を手に入れる術に長けていた。


「挨拶などいいわ、それで?」


「今少しお待ちいただければと」


 それを聞くと伶佳は突然不機嫌になった。


「お前、この間来た時と話が違うのでなくて?」


「申し訳ありません。米国の取引先のところには届いて既にこちらに向かって送られては居るようなのですが、なにせ船便になりますので今暫らくお時間をいただきませんと」


「もういいわ。次来た時に持ってこなかったら承知しないから。出入り禁止にします」


 骨董屋は伶佳の剣幕にすごすごと屋敷を後にするのだった。


「伶佳お嬢様、ああいったお方はあまりお屋敷にお呼びにならない方がよろしいのではありませんか?」


 祭は幼いころから伶佳の世話をしているので言うべき時は言う。


「いいのです。アレはあれで使い道があるのですから。それより祭、頼んでいた件は判ったの?」


「それが。その辺りに詳しい方に伝手は出来たのであと少しお時間をいただけましたら」


「どいつもこいつも時間、時間と同じことばっかり。私を馬鹿にしているの?」


「滅相もございません。お嬢様のことを一番に考えているのは、この祭だと信じていただけないのですか?」


 その言葉には何も応えず伶佳はもう祭を見てもいなかった。


「もういいわ、私が自分で調べたことが有ります。確かに神戸信孝の子孫は絶えたと言われていましたが、それは誤りです。そこを重点的に調べなさい」


「お嬢様、それは何処でお調べに?」


「どこでも良いでしょう」


「まさか、またあの場所に行かれたのですか?」


「だから、どこでもいいと言っているでしょう。もうこの話は終わり。いいわね、神戸信孝よ」


 言いたいことの半分も言えずに祭は仕方なく引き下がる。


「承知いたしました。それであれば早く見つけられるかも知れません。祭にお任せください」


 そう言うと祭は部屋を出ていった。

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