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第19話 結局『無名祭祀書』の解読は遅々として進まなかった。

 結局『無名祭祀書』の解読は遅々として進まなかった。


「お嬢さま」


「何?何か問題でも?」


「いいえ、解読作業については問題が生じている訳ではありません」


「ではどうしたの?」


「ここの、この西条家の蔵書庫はとても素晴らしいものは重々理解しているのですが」


「そうね、今帝都で一番と言っても過言ではないわ。稀覯書という範疇でいえば、という意味ですけれど」


 西条家の蔵書庫には数万冊の書物が収められているが、そのうちの大きな部分を占めているのが古今東西を網羅している希覯書の数々だった。


 特に多く収められているのが旧支配者の特徴や能力を調査した報告書の類だった。


 数多くの旧支配者たちが封印や追放されている中、その者たちの封印を解く方法が一番求められている。


 西条家の悲願も当然ある旧支配者の封印を解くことで間違いないのだが、残念ながら現在西条家にはその方法を記載された稀覯書は収められていなかった。


「それが?」


「西条家の蔵書はここ以外の場所にもある、とお聞きしたのですか」


「なるほど、佐島の事ですね」


「その佐島です。一度そこに連れて行ってはいただけませんか?」


「佐島に行けば作業が進むと?」


「その可能性もある、と言う程度ですが」


「確かに佐島にはここには無い本も数多く置かれてはいます。ただ私はここの本よりも佐島の本を数多く読みましたが、特に変わった物はなかったと記憶しているのですが」


「恐れながら申し上げますと、お嬢様がお気づきになられなかったことが一つの切っ掛けとなる場合もあるかと」


「私の眼が節穴だと?」


「いいえ、とんでもありません。それほど巧妙に隠されている、とお考え下さい。だからこそ焚書などにならずに後世に残されている、ということなのです」


「物は言い様ね」


「いえいえ、本当のことです。簡単に解読できれば苦労はありません。それほど封印を解くことが難しい、と思っていただけると」


「祭、祭。佐島に行きます」


 蔵書庫を出ると直ぐに祭を呼ぶ伶佳だった。

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