第13話 「祭、祭はどこ?」
「祭、祭はどこ?」
「はいお嬢様、祭はここに居ります」
伶佳に呼ばれて祭祥子は直ぐに部屋に入って来た。
「どうかなさいましたか?」
「どうもこうもないわ。あの女のことよ」
「あのおんなと仰いますと?」
「あの女と言えばあの女よ」
「申し訳ありません、祭にはどのお方か」
「判らないの?」
「はい」
「仕方ないよわね。名前を口に出すのが居やなんだけど、あのおんなとは紗栄子のことよ、決まっているでしょう」
「紗栄子様といえば嬬森侯爵家のお嬢様のことですか?」
「そうよ、それ以外私が『あの女』などと言う相手が居る訳はないでしょうに」
「もうしわけありませんでした。それで紗栄子様が何か?」
「あんな女に『様』なんて付ける必要は無いわ。あの女をどうにかしなさい、祭」
「どうにか、といいますと」
「なんで判らないのよ。あの女が太田さんに近づかないようにしなさいと言っているの」
祭としては伶佳が太田と言う神戸家の使用人に思いを寄せていることは知っている。その太田が嬬森家に出入りして紗栄子と仲がいいことが気に入らないのだ。
「嬬森家の内情はさすがに祭も存じ上げません。手を打てることではないと思いますが」
「私がお願いしているのに出来ないと言うの?」
祭はお願いではなく命令だろうとは言い返したりしない。ただこうなったら伶佳は後に引かないことはいつものことだった。
「判りました、では神戸家の方に少しお話をしてみましょう」
「なんでもいいわ、あの女が太田さんに会わなければそれでいいのよ」
太田と紗栄子が合わなければ太田の気持ちが伶佳に向くとは限らないだろう。寧ろ大人しそうな太田であれば紗栄子の方が似合っているとさえ祭は思う。




