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第11話 「それでも、というのだな?」

「それでも、というのだな?」


「いいえ恐れ多いことです。私如きの意見を取り入れることなどあってはなりません。御館様の御心のままに」


 太田としては自らの意見で神戸家の生来を左右してしまう訳には行かない。責任逃れではなく神戸道隆のやりたいようにしてほしい、というのが太田の想いだった。主の方針を実現するためには努力を惜しまない。


「まあいい、嬬森の旦那様には私の方でお話ししておく。お前は西条のお嬢様を頼む」


「具体的にはどうなさるおつもりですか?」


「うむ。そうだな、とりあえず色仕掛けといこうか。向こうも満更ではない様子だったからな」


「そんな」


「いや、間違いない。お前にとっては迷惑な話だろうがな。紗栄子お嬢様とはいずれちゃんと仲を取り持ってやるつもりだから安心しておけ」


「いえ、紗栄子お嬢様のことは」


「いいんだ。嬬森の旦那様にはそのことも含めてお話しするつもりだ。うちと嬬森家との絆になる、とな」


 神戸家に嬬森紗栄子に合う男性は居ない。道隆は既に既婚者だった。腹心である太田新平を跡取り娘の紗栄子の養子に迎えることで神戸家と嬬森家との間には強い絆が結ばれる筈だった。


 嬬森家としても西条家と敵対したいとは思ってはいない。一番の権勢を誇る西条家には今のところ誰も逆らえないのだ。


 西条家には跡取り息子である秀成がいる。二人の妹は他家とのつながりの為に嫁いで行くはずだった。


 その嫁ぎ先が華族でもない神戸家の使用人、と言う訳には行かない。伶佳もそれは十分理解している筈だった。


 ただ伶佳としては太田が気になっていることもあるが主眼としては嬬森紗栄子に対しての嫌がらせでしかないと道隆は思っている。


「伶佳お嬢様」


 神戸が伶佳を見つけて話しかける。


「あら、神戸様。どうされましたか?」


「先程のお話ですが」


「先程のお話?さて、何のお話しでしたでしょうか」


 伶佳は惚けている。


「太田を西条家に、というお話です」


「ああそのことですか。それで?」


「来週から太田を月曜日と木曜日にお嬢様の元にお伺いさせていただきます。先ほど西条の旦那様にもそうお話しさせていただきました」


 神戸は今まで二週間に一回西条家を訪れていたのを週に二回訪れることにしたのだ。そしてそのことを西条家当主西条監物公爵の裁可を受けた。


 神戸家としても西条家に出入れする機会が増えたのは喜ばしいことだった。

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