騎士の誉れ
「陛下が直接私に話とは一体何事だろう?」
今日、私は陛下に呼び出しをされた。基本的に何かあった際は、隊長からの指示で動くことになっているのだが、直接とは珍しい。
何か心当たりがあるわけではないから、怒られるとかそういうことではないと思うが……
まあ、呼び出されてしまった以上行かないわけにはいかない。
扉の前に着いてから一度深呼吸をしてノックをする。
「陛下、ウィークスです。呼び出しに応じ参上いたしました」
「入ってくれ」
陛下の返答を確認して扉を開ける。緊張しているせいか扉を開ける手に力が入ってしまう。
「やあ、ウィークス卿。そんなに緊張しないでくれ。今日はお願いがあって呼び出したんだ。まあ、聞いてくれ」
「はっ」
どうやら怒られるとかそういう話ではないらしい。しかし、お願いとは一体なんだろう?命令ではないのか。なら一体……
「彼、いるだろう?どうも命の危険がある場所に縁があるらしい。それは同行しているウィークス卿もわかっているだろう?そこでウィークス卿には、彼の護衛をお願いしたいと思っている。もちろん強制じゃないが人選的にウィークス卿が適任でね」
「何故命令ではなくお願いなのでしょうか?」
「護衛を受けてもらう場合、一時的にだがクレイヴァン隊から外れてもらって、彼直轄兼護衛になってほしくてね。そのほうが彼も動きやすいと思ってね。どうだろう、受けてもらえるかな?」
護衛は騎士にとって名誉ある事だ。受けないなんて選択はない。
クレイヴァン隊から一時的にとはいえ外されてしまうことは残念だが、護衛に勝ることはない。
なにより、彼がこの世界で何をしていくのかを間近で見られるというのは嬉しいという気持ちもある。
最近は、城に籠って賢者様と何やら研究しているという話も耳にしている。
正直に言って、私は魔法は使えればいいと思っていた身だ。だが、彼の発想はこの世界とは違うものがあって面白いと思う自分もいる。
もしかしたら、彼の近くにいれば剣の腕以外にも、何か取り込めるものがあるのかもしれないという期待がある。
悩むような話ではない。
「彼の護衛、謹んでお受けさせていただきたいと思います。任期はどれほどを見ておられますか?」
「今のところ、いつまでというのは考えていない。任期が決まってないのは正直申し訳ないけど、それでも受けてくれるかい?」
「受けさせていただきます」
「彼がこの国にもたらしてくれるものはきっと得難いものが多いはずだ。知っているかい?今まで他国からの輸入しか入手方法がなかった塩だが、ノーラン商会と協力したことで国内でも生産が可能になったらしい。これもその一部だ。とまあ、護衛を受けてくれてよかった。今までの生活とあまり変わらないかもしれないが、どうか彼を守ってほしい」
「わかりました」
護衛。護衛か。気合を入れねばなるまい。鍛錬の時間は少し減ってしまうがそれは仕方ないだろう。
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「アンリー。何だ話って」
なんか突然呼び出されたけどなんかあったのか?
てか、なんでシルビアもいるんだ?
「実はね、シルビアに君の護衛をしてもらおうって話になったんだ」
「え、なんで?」
なんで護衛なんだ?今のところ国から出てなにかしようって考えもないし、そんな話もしてないし、なんで?
「いや、君って割と危険なことに突っ込んでいくだろう?まあ勝算あってのことなんだろうけど、こっちとしては護衛がいてくれれば安心かなって」
突っ込んでるか?突っ込んでるか。突っ込んでるか……
いやでも、戦力は考えたうえで行動はしてるしな……
「まあ今まで、ウィークス卿が側にいなかったことはないだろうから、あんまり変わらないかもしれない。けど、ウィークス卿には正式に護衛になってもらいたくてね。どうだろう?」
「まあ断る理由もないし、こっちとしてはお願いしますって感じかな」
「それと期限は決めてないけど、護衛についてもらっている間はウィークス卿はクレイヴァン隊ではなく、君直轄で動いてもらおうと思ってるから。よろしく」
「今までとあんまり変わらないな。基本的にシルビアといっしょに行動してればいいんだろ?てか、シルビアはいいのか?」
シルビアの自由な時間を奪ってるような気がしてちょっと気が引けるな。
「無論だ。騎士にとって護衛任務とは名誉あることだ。断る理由など無い」
「そっか。じゃあ改めてよろしく」
「こちらこそよろしく頼む」
「さて、話もまとまったことだし、今日は気分でも変えて庭園で話でもしようか」
案内されて着いたのは立派に花が咲き誇り、きれいに手入れがされた庭園だった。
「へぇ、随分立派なもんだな。こんな場所が城の中にあるなんて全然知らなかったよ」
赤、白、黄色様々な色がこの庭園を彩っている。
「ありがとう。褒めてもらえると頑張って手入れした甲斐があるよ。それに、まだ君にはこの城のすべての場所を案内したわけではないからね。こんな場所もあるってことさ。さて、我が国を回ってみてどうだったかな」
「難しいことはわからないけど、とりあえずすごいなってのは分かったよ。農機具もないのにあんな広い畑を人の手で耕すなんて想像はできても実際に見ると改めてな」
「その農機具っていうのはなんだい?普通の農具とは違うのかい?」
「そうだな、農機具ってのは農具を自動化した魔具って言えばわかりやすいか?」
農機具も再現できたらいいんだけど、俺のイメージが上手く伝わるかにかかってるし、第一再現できるかもわからないんじゃ軽いことは言えないしな。
「君の世界にはそんな便利なものがあるんだね。ますます興味が尽きないよ」
「まあ、再現とかはそのうち、な。ちょっと疑問があるんだけど、粉挽き小屋見させてもらったけど、あれって危なくないのか?」
粉挽き小屋って言えば、粉塵爆発とか、歯車に巻き込まれるとか、弾けた石臼の欠片に当たるとか危険を考えたらいっぱいあると思うんだけど。
「うん危険だよ。火の気は近づけないようにいい含めてある。その他の危険については飲み込んでもらうしか無いな。正直対策という対策が思いつかない」
やっぱり危険だよなあれ。まあ対策なんにも思いつかないもんなー。
「あとは農具がなんとかできればいいけど再現できるかもわからないし、収穫祭の農具を焼くのにも関わってくるからな、ちょっとなんとも言えない」
——ってなわけで農業に関しては門外漢だからこんなもんかな」
「そうか、わかった。じゃあ今日はこの辺までにしよう。ここまで付き合ってくれてありがとう」
「いや今回はあんまり力になれなくて悪かったな。もうちょっと知識をつけることにするよ」
「では陛下、私もこれで失礼いたします」
「改めて護衛の件頼むよウィークス卿」
「はっ」
「じゃあな」
「さて、このまま家に帰るか?」
「いや干草亭によってから帰ろうと思う」
「そうかでは私も行こう」
四六時中ついて回る気か?いやでも護衛ってそういうもんか。
干草亭は今日も賑わってるな。
「なんだ?シルビア、酒頼まないのか?」
「護衛なのだから飲めるわけ無いだろう」
「そっか、じゃあ仕方ないか」




