作品番号一番
「なぁ、ロザリンド。俺って本当に魔法使えないのか?出口がないって言ってたけど身体強化みたいなのは?」
俺だって魔法使えるなら使ってみたいさ。せっかくヒトより持ってる魔力多いんだったら、ねぇ。
「口説いな。出口がないと言ったのは魔力を変換できる機能がないってことなんだよ。だから小僧の魔力は持ってるだけ、使えん。ただなぁ。小僧の魔力はちょっと変なんだよ」
「変ってどういうことだよ」
「いやなに、普通なら魔力ってのは腹のあたりに溜まってるもんなんだが、小僧の場合魔力が全身に溜まってるんだよ。形だけ身体強化してるみたいな感じか?まあそんなのは見たことがないからなんとも言えん。別に身体能力が強化されてるわけでもないんだろう?」
「これと言って変化はないな」
「勿体無い限りだ。まあ何らかの形で体に作用はしてるんだろうと思うが、どういう形で作用してるかまでは分からん。結局分からんってことだ。それで、小僧はどんな知恵を提供してくれるんだ?」
提供できるものはたくさんあるけどどれを提供するかなぁ。車も実現できたら便利だなって思うけどエンジンの仕組みも完全に理解してるわけじゃないしなぁ。
「とりあえず、アンリに話したのは冷蔵庫ってやつか?」
「あぁ、なんか聞いたなそれ。食材を冷やして保管する氷室の代わりだっけ?」
「そう。再現するなら多分氷の魔具を作ってそれを断熱材とか詰めた箱に入れるって感じかな」
「ふむ。図はないのか図は」
事前に用意してもらってた紙にイメージを書き出してみる。確か昔の冷蔵庫って上に氷を入れて下を冷やしてるんじゃなかったかな?だったら上を魔具にして下を保管スペースとして……
「断熱材って何があるんだ?」
「藁、おがくず、あとはコルクか?」
「そしたら側だけ三種類で作ってみるか?外側の箱は木で作って間に断熱材、その中は木か。鉄は錆びるしな」
「じゃあ私は氷の魔具を作ればいいのか?」
「氷の魔具と、あと魔力を冷気に変換する魔具とかって作れるのか?」
氷だけだと解けた氷の水滴とかの問題もあるしな。
「ふむ冷気か。まあ、氷の魔具の延長で出来るかどうか作ってみるわ。しかし異界人はいろんな知識を持っているな」
「先人の知恵だよ。俺達はそれをありがたく使わせてもらってるだけ。まあこの世界でも技術革命とかが起きればどんどん便利になってくんじゃないか?」
この世界で技術革命か……魔導革命とか魔術革命、魔法革命そんなあたりか?やっぱりこの世界で革命が起きるとすれば魔法に起因したものなんだろうな。
「それより箱はどうするんだ私は作れないぞ。あてがあるのか?」
「まあなんとかなるでしょ」
「というわけで、なんかあてあるかアンリ?」
ちょうどいいところに一般通過アンリがいてよかった。
「突然だね。金属系の加工ならロックウッドの鍛冶屋。木材系の加工ならザックの工房かな。城にはお抱えの技術者はいなくてね、街に依頼してるんだ」
「ロックウッドなら知ってる。シルビアに鞘は殴るもんじゃねえってすごく怒ってたな。ザックは知らないな」
「ふふ。シルビアらしいね。まあ行ってみるといいよ。多分力になってくれる。私が書状を書いてもいいんだけど王命みたいになってしまいかねないからね」
「わかった。ありがとう。ってわけでロザリンド、ちょっと街まで行ってくる。魔具の制作は頼んだ」
「任された」
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「ザックの工房はここか」
ロックウッドの鍛冶屋からそれほど離れてないところにザックの工房はあった。
この辺一体が職人通りみたいになってるんだろうな。
留守にしてないといいんだけど。
「こんにちわー」
「いらっしゃい。うちになんか用かい」
出迎えてくれたのは筋骨隆々のおっさん。イメージ的には大工の棟梁みたいな感じか?
「実は——」
特に隠すこともないから、ざっくりと今の状況を説明する。
実際話してみると気の良いおっちゃんみたいに感じるな。
紙に書いたスケッチを見せながら説明していく。
「陛下からの紹介か。にしても兄ちゃん面白いことやってんな。それで?うちは外側を作ればいいのか。あと断熱材に使うおがくず、藁、コルクか。おがくずと、藁はすぐ用意できるけど、コルクはちょっと時間かかるぞ。兄ちゃんの話だと板状にしたほうがいいんだろ?」
「時間はかかっても全然問題無い。一応中の箱も木で作ってもらいたい。金属がいいのか木材がいいのか比較したいからな」
「任せとけ。そうだな余裕見て七日後また来てくれや。ロックウッドんところにも頼むんだろ?ロックウッドに箱ができたらうちに持ってきてくれって話通しておいてくれや」
「わかった。よろしく頼む」
次はロックウッドのところか。工房と鍛冶屋が離れてなくて結構助かるな。普段からもの作る時提携してたりするのかな?
「ロックウッド。作ってもらいたいものがあるんだけど」
「なんだぁ。いきなりだな」
「今、氷室の代わりになる道具作ってるんだけどザックのところで外側の箱作ってもらうからロックウッドには中の箱を作ってほしいんだ。あ、図面一枚しか無いんだった……」
「なんだ図面くらい今引いてくれりゃいいだろ」
「いや図は描けるんだけど、文字がさ……持ってきた図面も他の人に文字書いてもらったんだ」
「っかー、坊主。話を聞く限り城に遣えてんだろ?文字ぐらい書けるようになっとけよ」
「返す言葉もない……」
いい加減この世界の文字の読み書き覚えなきゃならんな。
会話は腕輪のおかげでなんとかなるけど文字ばっかりはな……
「まあいい。ザックんところに図面あるんだろ?どういうもん作るかザックと話しながら決めるわ。作ったらザックんとこ持ってっときゃいいんだろ?」
「それでお願いします」
さてさて。出来ることがなくなってしまったな。文字教えてもらうにしても誰に教えてもらえばいいんだ?マリー暇してるだろうしとっ捕まえるか。
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「マリー。居るかー」
シルビアの家でマリーにあてがわれた部屋のドアを叩くと中からガサガサバタバタと暴れ回ってる音がする。
薄々分かってたけど汚部屋なんだろうなぁ。
「は、はい。ちょっとま」
「入るぞー」
案の定というかなんというかとんでもない光景が広がってる。脱ぎ散らかした服に空いた酒瓶……
「なんで入ってくるんですか!もう!」
「もう!じゃねぇよ!お前、間借りしてる分際でよくここまで散らかせたな!」
「ひぃん」
ひぃんじゃねぇよ、ひぃんじゃ。
「マリーって文字の読み書き出来んのか?」
「出来ますよ!私のこと舐めてますね」
いや舐めるもなにも、この世界の識字率とか教育がどの程度まで進んでるのかが分からんのだよ。
「まあいいや。俺に文字の読み書きを教えてほしいんだよ」
「相談役さんが、私に、読み書きを?ふふん、ついに来ましたか私の時代が!」
なんだこいつ。ノリが世界を越えてるぞ。にしてもウザいな。
こいつこんなウザかったっけ?
「お前の時代は永遠に来ないよ。来ないけど俺に読み書きを教えてくれ」
「そんなこと言っていいんですかぁ?教えませんよぉ?」
「教えてください……ってか識字率ってどうなってるんだ?」
「ふふん。いいでしょう。ワタシが教えてあげます!識字率は高いはずですよ。他の国は知りませんが聖国では幼少の頃に皆で勉強する機会があるんです。それで全体の識字率と計算能力を底上げしてるんです」
「へぇ。じゃあ俺もそこに行けば教えてもらえるのか。いいこと聞いたありがとう。じゃ」
「待ってください待ってください。ワタシが教えますからぁ」
「そうか助かる。じゃあ教えてくれ」
「立場逆になってませんか!?」
文字のこれで問題はなんとかなりそうだ。よかったよかった。




