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魔王の残したその軌跡  作者: 椎谷
第二章 『ハーヴェストフェス』
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魔法をもっと便利にの会

「やあ、今日は早いね。執務を少し片付けるから少し待っていてくれ」


「悪いな。少し早く目が冷めちゃって」


 こんな朝早くから執務なんて王は激務なんだな。俺この時間に来てよかったのか?


「そういえば、以前なんとなく口にしていた『魔法をもっと便利にの会』当てがついたぞ」


「は?いやあれはただ思いつきで口にしただけで……」


「まあそう言うな。魔界に住む魔女に書状を送ってみたら食いついてきたよ。なんでも、『そんな面白そうなこと私が参加しないわけがないだろう』だそうだ」


「魔界に魔女って初耳なんだけど」


「おや、聞いてなかったのかい。君が最初にいた場所つまり魔王の居城がある場所だね。それが魔界だ。そして魔女は、まあ簡単に言うと隠居してるんだよ」


「初耳なんだけど……」


 魔界って言うからもっと物騒な場所かと思ったら魔王城のある地域を魔界って言ってるのね。安直だけど納得だ。


「なに、他の魔界に比べたら平和な場所さ。なんせ魔物も魔獣もいないからね」


「他の魔界に魔獣?魔物と何が違うんだ」


「まず魔界だが、レイシア王国北西の魔界、魔王領。それから、隣の国ソアラ王国とミナス王国に挟まれたソアラ魔界。それと、ここからずっと東の国。ファナティア共和国南東にあるファナティア魔界。それと聖国の南海を渡ったところにある島の魔界、別名ダンジョンの四箇所がある。なんで魔界なんて言われてるかって言うと、昔魔王と勇者が争ってできた魔素の濃い地域を魔界って言ってるんだ。ダンジョンは魔王の研究施設なんて言われてるけどはっきりとは分かっていない。それと魔物と魔獣の違いは温和か獰猛か。人に害なすかそうでないかの違いだ。このへんは常識なんだけどね」


 こちとら今のところ、今日を生きるので精一杯なんだよ。


「畜産と害獣か。じゃあ魔獣ってのは主に魔界にいるのか?」


「まあ例外もあるけど概ねその通りだ。魔界に面してる国は兵士が訓練兼駆除をしていたり、ファナティア魔界とダンジョンでは主に冒険者かな、が魔獣の駆除をしているよ魔獣の魔石はお金になるからね」


「ふぅん。まあ魔法も使えない戦闘も出来ない俺にとっては無縁の場所だな。ってか話ししてるけど仕事は平気なのか?」


「なに、雑談程度なら問題ないさ。まあそれで話を戻すと、魔女が近々こっちに来るから迎えろってさ。それと小僧に会わせろって……小僧ってのは君のことだね」


「まあ、こっちに来ちゃうなら仕方ないか。魔法を便利にって言っても俺の世界にあった道具を再現できないかなーってなもんだぞ?」


 掃除機とか電子レンジとか家電があったら便利になるかなーなんて思ってはいるけど、実際再現できるかどうかなんてわかんないんだけどね。


「前に言ってた、冷蔵庫だっけ?食材を低温で保存しておく装置。あれなんて実現できれば革命的だと思うけどね。実際、今は城や商会が抱えてる氷室に氷の魔法で定期的に大きな氷を作り出すことで食料の保存をしているんだ。それだけでも莫大な人件費がかかる。それが魔具に置き換わればそんないいことはない」


「仮に冷蔵庫が出来たりしたら職を失う人が出てくるんじゃないのか?」


「流石にそれ専門でやってる人はいないんじゃないかな?例えば、城だったら魔法師団が集まって氷を作る。まあ通常業務の一つだね。商会なんかは多分ギルドに定期的に依頼を出してるはずだよ。報酬もそんなに高いわけじゃない、皆半分義務みたいな感じだよ。氷室が無いと食べ物に困るのは皆同じだからね」


「そんなもんか」


 流石に職を失う人がいるんだったらどうかなーと思ったけど、その心配もあんまりないのはいいな。


「とりあえず一段落かな。クレイヴァン卿、お茶を入れてくれるか?」


「かしこまりました」


 いつ見ても王国最強がお茶を淹れる姿は違和感しかないな。でもクレイヴァン卿の淹れるお茶って美味しいんだよな。


「どうぞ」


「ありがとう」

「ありがとうございます」


「さて、」


『陛下、城門前に魔女が』

『私を魔女って呼ぶんじゃないよ!賢者って呼びなさい!』

『け、賢者がお見えになっております』


「中庭に案内してくれ」


 へぇ、水晶そういう使い方したのか。めちゃくちゃ贅沢な使い方だな。


「聞こえていたね。魔女が来た。中庭に行こうか」


「あ、ああ」


 それにしても、魔女か。本人は魔女って呼ばれるの嫌がってたみたいだけど、どんな人なんだろう。やっぱ魔女って言われるくらいだから、おばあちゃんなのかな?わからん。

 まあ、行けばわかるか。

 アンリとクレイヴァン卿のあとについていき中庭に移動する。


「ほう、黒髪。お前が現在の魔法に限界を感じて物申した小僧か。面白いものを持っているな。どれ私が一つ手ほどきを……」


「賢者ロザリンド、魔界から人里までわざわざご足労をかけます」


「おう、アンリの小僧か。なに、面白そうなことがあれば飛んでくるのは当たり前のことだろう?」


 一国の王を小僧呼ばわりって、この魔女何年生きてるんだ。しかもババアじゃない。めっちゃ若く見えるぞ!


「おい、小僧。人を見るなりいくつなんだろうと勘ぐるのはよろしくないな。女の年齢はいくつになっても秘密なんだよ」


 なんで考えてることがわかるんだよ。嘘破りとは話が違うぞ。


「ほう、その顔は図星か。全く失礼なやつだ。まあいい。私が、悠久の時を生きる賢者ロザリンド様だ。敬え、小僧」


「は、はあ」


 悠久の時を生きる魔女ロザリンド。いかにも魔女みたいなローブを羽織ってる。見た目は二十代前半に見えるけど、その物言いは酷く尊大で、明らかにこっちを下に見てる。まあ本当に悠久の時を生きてるってんなら、そんじょそこらにいるやつ皆少ししか生きてない小僧なんだろうな。


「さて、立ち話も何だ。早う座って話がしたいな。うん?おい、最強。茶をくれんか」


 中庭に設置されているテーブルに皆で腰掛ける。クレイヴァン卿はお茶を淹れに行ってしまった。

 足組んでふんぞり返って偉そうな座り方してんな。長生きしてりゃ偉いのか。


「王国最強は最強なんだ」


「当たり前だろう。最強に最強と言って何が悪い。此奴はとんでもない研鑽の上に経っている。故に最強。敬う意味も込めてそう呼んでるだけよ」


「自分が敬うって概念はちゃんと持ってるんだ……」


「おい、小僧ちょくちょく失礼なやつだな、お前。わざわざ小僧に合うために人里にわざわざ来てるんだが?私帰ってもいいか?」


「まあまあ、賢者。彼の話を聞いてからでもその判断は遅くないのでは?実際に面白そうだからわざわざ来てくれたんでしょう?」


「ま、まあな。興味がなければわざわざこんな所まで来たりせんよ。さて、小僧。お前が考える魔法を便利にとはどんなものだ?一応草案みたいなのは聞いてるが、直接聞きたい」


「魔法を便利にっていうか、もっと魔法って自由なんじゃないかなーって。例えば、氷室の話だと魔法使いが皆で協力して大きな氷を作り出すらしいけど、なにもでっかい氷にこだわらなくてもいいんじゃないか?と思って。そうだな。せっかく魔力を持った魔石なんてものがあるんだったら、魔石を魔力の供給源にして氷の魔法を自動で使う魔具っていうのか?そんなのがあってもいいんじゃないかなって。もちろん箱には熱を逃がしにくい工夫をするのは前提として」


「ふむ。及第点。皆、今ある魔法を使うのが当たり前になって、それに付随する仕事をするのも当たり前。全部当たり前だと思って発展させようという気がない。当たり前を免罪符に思考停止してる者ばっかりよ。それじゃあ面白くない。小僧の言う通り魔法はもっと自由に。なんなら自分が魔法を発動しなきゃいけないっていう固定観念もどうかしてる。別に術者が直接発動しなくても、小僧の言った通り魔具でもなんでも作れば便利になるというのに、なぜ誰もその先へと考えをやらん。それに比べて小僧の考え方は良い。自由だ。小僧、魔法は使えるか?」


「いや、俺は魔法が使えない、と思う。どうにも魔力を感じるって感覚が備わってなくて使える気がしない。そもそも俺の世界に魔法なんてなかったし」


 そうなんだよなー。最初ラウラさんに教えてもらった時も、なんかよく分からん感じがするだけで実際に魔法を発動するって感覚がよくわかんないんだよな。


「おい小僧。両手を出せ」


 言われたとおり両手を出すと、魔女がその両手を掴んできた。

 そうして数分……


「駄目だな。小僧は魔力をたくさん保持できてるが、魔力孔。外に排出する出口がない。ただ魔力を持ってるだけの存在。ヒトというより魔物?というか、お前俺の世界とか言ったか。ひょっとして魔王と同じ異界人?」


「そうっす」


 今更かよ。最初俺のこと黒髪って呼んでんじゃん。


「かぁー。勿体無い。せっかく魔王と同じ異界人っていうのに魔法が使えないと。本当、異界人ってのはよく分からん。まあいい。お前はその知恵を私に貸せ。私は面白そうだからその知恵を形にしてやる。おい最強。もう一杯」


 うわ、クレイヴァン卿お茶汲み係になっちゃってるよ…….

 この魔女、面白いことがないと死ぬのかってくらい面白い事に飢えてんな。まあ実際いくつかしらんけど長く生きると面白いことないと退屈なんだろうな。


「それより小僧。面白い腕輪を付けてるな。ちょっと見せてみろ」


「え、ああ。翻訳の腕輪だって。ラウラさんに貸してもらった」


「ふむ。アンリの小僧。其奴もここに呼べ。私の弟子にする」


 アンリは待機してる侍女に言いつけて侍女は城の中へ消えていった。っていうか侍女さんいるならお茶淹れるの侍女さんに頼めばよくね?

 十分程してラウラさんはやってきた。


「陛下、私を呼び出して何事……あらあら賢者様ですか?」


「お主がラウラか。そうだ私が賢者ロザリンドだ。敬え。そして光栄に思え。お主を弟子にしよう」


「なんでまた……あ、もしかして翻訳の腕輪を見たんですか?嫌だ、恥ずかしい」


「実にいい出来だ。装着者の魔力を流用できればもっと良かった」


「難しくてそれは諦めちゃいました」


「よし。この三人で研究をしよう」


 色々とどんどん勝手に決まってくよ。俺、びっくりするほど蚊帳の外。

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