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ポンの子

 連絡が来てから暫く経つが、オビヤ教の司祭は未だ現れない。どこかでトラブっているのかわからないが、そろそろ来てもいい頃だと思う。あくまでも感覚レベルの話ではあるが。

 この世界に地図があるかどうか定かではない。少なくともそんなものは一度も目にしていない。精巧な地図があればそれはおそらく軍事利用が可能な代物になってしまうと思う。

 そんな事を考えながら今日も王城に向かう。


「やあ、ハタエ。聖国の司祭だけど、今日中につくらしい」


「連絡きたのか。けど、よく地図もなしで現在地がわかるな」


「さっき国境を超えたと司祭から連絡があったよ」


「決められた通信相手以外にも連絡取れるのか。ホント便利な道具だな」


「ああ、とても便利だよ。そうだね。国境を超えたあたりなら、後半日もあれ着くんじゃないかな?馬車で来ているか、馬で来ているかによって、多少前後はするだろうが」


 普通はどうなんだろう?単独での移動なら馬車を使わずに馬単独で移動してきそうなもんだけど。まあ移動手段として、馬車や馬がどれくらいの速さで進むかなんていまいちわかってないからなんとも言えないな。


「会談は明日になりそうか。もう太陽もてっぺんにあるし今日中ってわけには行かないだろ」


「そうだね。ところでハタエの世界の移動手段はどんな物があるんだい?」


「あー、鉄の箱が馬無しで馬車以上の速度で走ったり、鉄の馬が走ったり、鉄の大きな鳥が人を乗せて空を飛んだり色々だ。多分言っても想像できないんじゃないか?」


 地球(こっち)の世界の乗り物のことを話しても、奇妙奇天烈過ぎて想像なんかできないんじゃないのか?第一馬無しで走る馬車とかなんだよってなるだろ。


「ふむ。全く想像できないね。はは。一体どれほどの歳月研究すればそんな世界になるのだろう」


「俺になにか求めても無駄だぞ?俺も理解してないからな」


「それは残念だ」


 んな、期待されても困るっての。精々俺が口を出せるのは快適な馬車の作り方くらいのもんだ。まあその馬車も車軸懸架っていうのか?ファンタジーあるあるの車軸の上に直接荷台部分が乗ってる簡単馬車じゃないからこれ以上の発展形は知らないな。


「ハタエがわからないとなると、馬車の発展は時代の流れに任せるしかないかな」


「それがいい」


「ところで、ハタエが監修している塩作りはうまく行っているのかい?」


「耳が良いことで。あー多分うまく行ってるんじゃないか?あんまり顔出せてないからなんとも言えないけど基礎部分は教えたつもりだからな。塩が手に入りやすくなると料理に幅が増えて俺は嬉しい」


「楽しみにしているよ」


 楽しみにされてもな、作ってるのはただの塩だから何も特別なことはないんだけどな。まあ塩が嗜好品のこの世界では、塩が比較的手に入りやすくなるだけでも大きな変化になるのかな。


「そういえば塩の権利関係ってこっちで決めていいのか?」


「ああ、それでかまわない。すでに塩の利権を握っているヒトはいるが、気にすることはない。彼らは自分で作るすべは知らない者たちだからな」


「へぇ。じゃあ好きにやらせてもらうわ。ちょっと衝突しそうだけど問題ないだろ」


 まあ王様印の塩にケチつけてくるような輩がいるとは思えないけどな。


「しっかしマリー司祭遅いなぁ。移動手段に関しては手を加えられるところがないから移動の遅さは仕方ないと見るべきか」


 すでに日は暮れ始め、あたりが暗くなり始めた頃。

 城門で煙を上げながら走る馬車が一台、こちらに向かって走ってくる。


「止めてくださいぃー。急に暴走し始めて止まらないんですぅー」


 今にも泣きそうな大声を上げて馬車が突っ込んでくる。あんなのに巻き込まれたらひとたまりもないので避けることにするが、なんで、アンリは避けないんだ?

 アンリが馬に向かって片腕を上げると、馬は急ブレーキをかけ、アンリの眼前で止まった。御者台にはひっくり返ったカエルのようなポーズをした女性がいる。

 女性はいそいそと居住まいを直し、馬車から降りてこちらに挨拶をしてきた。


「はじめまして。シード聖国の司祭、マリーです。派手な登場になってしまってすみません」


「はじめましてマリー司祭。私がレイシア国王、アンリ・ベルジュ=レイシアだ。そして彼が」


「はじめまして。ご紹介に預かりましたハタエです。簡単に言うと研究者みたいなものです。どうぞお見知りおきを」


 嘘はいっていない。日本語を解読できる唯一の人だから間違ってないし、塩とか新たな産業を興したりもしているから問題ないはずだ。そしていちばん大事な理由。おそらくこのマリーとかいう司祭、ポンだ。


「国王様に研究者さんですか。これはこれはすごいお出迎えありがとうございます。ところで国王様はわかるのですが、研究者さんはどうしてこちらに?」


「そうですね。本の解読ができる研究者とでも言っておきましょうか」


「なるほど。それでこちらにいらっしゃるのですね」


「立ち話もなんですから、馬車は預けてもらい、時間も時間ですから明日改めてお話しましょう来賓用の部屋か、町宿選べますが、どちらにしますか?」


「町宿で休むことにします。国賓なんて扱いされたら痒くてたまらないです」


「わかりました。では明日また改めて城にお越しください。その際は徒歩でお願いします」


「はいぃ……すみません」


 しょぼくれたような姿勢でマリー司祭は城下町に消えていった。


「さて、俺が思うにあのマリーってのは相当抜けてると思うんだがどうだ?」


「奇遇だね。私もそう思っているよ」


「あんなのが単独で来るとは考えづらいなー。絶対別働隊とかいるだろ。いや~勘弁」


「おそらく暗部が別働隊として動いているだろう。本の遣り取りをするときは十分気をつけなければね」


「だな。じゃあ、俺は干草亭に行ってくるわ」

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