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空を切るメイス

退院したのでぼちぼち再開します。リハビリがてら短めです。

頭がボケてるので誤字等などあれば指摘いただけると幸いです。

「なるほど。それは聖国は知らないだろうね。そんなことが知れていたら、オビヤ教は今のような勇者信仰はできないだろう」


 ろくでもないやつだな勇者は。なんでこんなやつが勇者なんて呼ばれてるのか不思議で仕方ない。後世に伝わる自分の印象をとことん捻じ曲げたとしか思えない。


「さてだ。二冊とも読んだわけだが、この日記を信じるなら、まず勇者がろくでもないな。正直言ってそんな勇者を信仰してるオビヤ教もどうかと思うが、信仰される器にないな。どう考えても魔王のほうが信仰される価値のある人だ」


「ふむ。それに関しては私も同感だな。正直な話勇者の尻拭いをしている印象だな魔王は。しかし魔王の遺した書物を読むに、この二冊を書く間になにか劇的な心境の変化でもあったのだろうか。あまりにも一冊目ともう一冊では何から何まで違いすぎる」


 ギャル文字で書かれた日記はおそらくこの世界に転移してすぐ残した日記だろう。通常の文字になった日記は、この世界にだいぶ順応したあとに残したもののようだ。まあ読まれることを前提として書いたのならギャル文字も普通の文字にしてもらいたかった。読めないわけじゃないがとても読みづらい。


「解読も終わったし、この部屋に用はもうないな。アンリ、まだ本の事でなにか知りたいことはあるか?」


「いや今のところはないな。若干取り扱いに困る情報があるが問題ないだろう」


 そんな話をしながら、準備されていた服を脱ぎ、いつもの服に着替える。これで読んだ痕跡が残らないというのだからすごい話だ。

 アンリも着替え終わり、部屋をあとにすると部屋の前に役人が立っていた。


「陛下、聖国より連絡があり、本の回収にマリー司祭という人物が回収に来るとのことです」


「わかった。ご苦労、下がっていいぞ」


「はっ」


 連絡事項を伝え終えると


「長距離連絡できる便利なもんあるんだな」


「オビヤ教の秘匿技術だな。解明しようとしたがさっぱりだ」


「そういうの囲って利権を得てるのか。盗聴されているかもわからんから秘密の通信になんて使えるような代物じゃないな。不便だ」


「まあ、そう言うな。この技術を貸与されるまでは大変だったのだぞ。それまでは実際に使者を送って返事は蹴ってきてからだからかなり時間が経っていたものだ」


「技術の進歩は喜ばしいね、秘匿なんかされてなければだけど。それで、そのマリー司祭ってのはいつ頃来るんだ?」


「早ければ二日ほどで来るんじゃないのか?」


 二日か、しかしこんな重要そうなものたかが司祭に任せるもんかね。もうちょっと上の役職か、暗部でもよこしそうなもんだけど。


「来るのはそのマリー司祭だけだと思うか?あったことがないからなんとも言えないけど、裏で暗部も動いてたりするもんじゃないのか?」


「その可能性は高い。ただ連絡なしに暗部をよこすのはそれはそれで問題になりそうなのだが……」


 事前通告なしの暗部の介入なんてあった日には非難を受けるのは聖国のほうだろうに。

 あんまり小難しいことは考えたくないけどちょっと当日のこと考えないとだめかな。


 ・・・・・・・・・


「レイシア王国まで聖国から地味に遠いんですよね。歩いていくのは論外なので、移動は馬車一択ですが。はぁ。なんで私なんでしょう。重要そうな書物なら大司祭様が直接赴いてもいいとは思うんですがね。なぜなんでしょう。しかも私一人ってことはないんでしょうねぇ。暗部さんとか私の尻拭いでついてきてそうなものですが、その旨はレイシア王国には伝えてるのでしょうか。バレたらちょっとした問題になりかねないと思うんですけれども……」


 マリーの読みは当たっていて、彼女単独で本の回収に行くわけではない。その他にも暗部が数名同行している。最も、それを気取られる暗部たちではないが。


「まあ私ごときが考えても仕方ないですね本の奪還を第一に考えなければ」


 パシンと頬を叩き気合を入れるマリー。


「お役目は果たします!」


 馬に活を入れレイシア王国に向けて出発する。それと同時に暗部も歩みを進める。

 旅そのものは平和だった。特に何かにアクシデントがあるわけでもなく、馬車の装飾を見て日和っていくヒトも多数いた。

 これは何事もなくレイシア王国までたどり着けるんじゃないか?そんな事を考えた矢先、青年が橋を通行止めにしている。


「ここを通りたくば俺を倒してみろ!」


 無防備なヒトを痛めつけるのは趣味ではないが門番的な役割をしているのなら仕方ないだろうご自慢のメイスをブンブンと振り回し青年に接近していく。


「あら、さっきまでの威勢はどうかしたのかしら。このメイスを見て怖気空いちゃった?」


「っは、そ、そんなことあるわけ無いだろ」


 そんな青年の言葉とは裏腹に声と身体は震えている。


「あ」


 マリーの持つメイスはブンブンと風を切り、振り回しているうちに手からすっぽ抜け、青年の足元にめり込んだ。


「ちょっと今日は調子が悪いなぁ……特別に通っていいぞ」


「あらそう。悪いわね」


 マリーは馬車に戻り、馬を進める。


「何だったのかしら。意味がわからないわね。力試し?それとも剥ぎ取りか何かかしら?でも、メイスに恐怖するなんてそういうの向いてないんじゃないかしら」


 馬車は街道を進む。

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