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解読

作者入院のためしばらく更新お休みします。

 解読は後日ということだったので、久々に王城に来た。

 王城には来てたんだが、最近アンリは忙しいみたいで意見交換会も行われなかった。

 まあ、王様だし忙しいのは仕方ないと思う。おまけに俺が持ってきた本の解読する部屋の準備とかもあるだろうし時間が取れないんだろう。


「聖国から本の返還要請があった。もっとも見つけたら返してほしいという内容だったけどね」


「まあそりゃそうだな。それで?解読はどうするんだ?」


「もちろんするとも。とても大事な事だ」


「内容がなんであれ俺は責任取れないからな?」


 責任なんて取れるはずがない。まあタイトルが日記だから、そんな大事なことは書かれてないんだろうけど。万が一ってこともあるので一応。


「大丈夫だ。記録に残すようなことはしないから漏れる心配はないと思うよ」


「俺、拷問とかされたら拷問される前に吐く自信あるよ」


「ははは。そんなことがないことを祈ろう」


 まったく、無責任だなー。俺の痛み耐性の無さを舐めるなよ?捕まったりしたらその時点で吐く自信あるわ。


「さてだ。来て早々悪いが、部屋を移動しよう」


 クレイヴァン卿を先頭にして場内を歩くこと数分。机だけが部屋の真ん中にぽつんと置かれた部屋に案内された。

 イメージとはだいぶ違うな。なんかこう、魔法陣とかが描かれてるイメージだったんだけど何の変哲も無い部屋だ。


「これを着てくれ。衣服に魔力が付着するのを防止する。この部屋は……そうだな、防音の結界の張られた部屋だと考えてくれればいい。他にもあるが難しい話はやめておこう」


「へぇ。やっぱ魔法って便利。それで、どっちから読み進める?」


「我が国に伝わる本からにしよう」


「わかった」


 意を決して日記と書かれた本を開く。ナンバリングはされていないので比較的きれいな方がレイシアに伝わる本だ。


「えーと、『なにここ、不便すぎてちょーウケるんですけど』は?」


 待て待て待て。何だこの読み辛い文字は。平成初期か中期のギャル文字か?これ日記なのか?大事なこと書かれてるかどうかも一気に怪しくなってきたな。


「どうしたんだ、ハタエ?」


「あー、これ地球(こっち)の世界じゃ二、三十年前の文字だ。少なくとも三百年前の人じゃないことは確かだな。翻訳の魔法を信じて読み進めるけど、非常に読み辛いから時間かかるかもしれない」


 どうやら魔王は帯谷って奴と同時期にこの世界にやってきたらしいけど、帯谷って奴印象っすごく悪いな。ボロクソ書かれてる。まあ人の胸じっと見るのはどうかと思うぞ。

 知恵の力?なんかギフトでも貰ってたのか?文面からするとそんな感じだな。羨ましいね。

 とりあえず三百年前は今みたいにきれいな水洗トイレではなかったらしい。文句言ってる。最初に改善されたのはトイレからか。

 魔族か、今のところやってるのは人助けが主だな。魔族にするっていうのも死にそうな奴、助けるためにやってるっぽいな。

 魔族は髪の色が暗くなって瞳の色も暗くなるのか。だいぶ容姿変わっちゃうんだな。

 それで次に手掛けたのが魔具。植物の成長を促進させる魔具か?文面だけだといまいちすごいことやってる感じが伝わらないな。多分やってることはかなりすごいんだろう。食糧事情の改善か。

 帯谷の印象は金魚のフンだな。一生くっついて回ってるな。

 なるほど魔具の能力のベースは魔族の特殊能力がベースなのか。魔族化すると異能が使えるようになってそれを魔具にした感じか。


「奴隷って今は禁止されてるのか?」


「すべての国で禁止されているね」


「とりあえずこの本に書かれてる帯谷と、オビヤ教のオビヤが一緒かはわからんが、ろくでもないやつなのは間違い無さそうだ。金があったら奴隷を侍らせそうな奴らしい」


「それは許しがたいね」


「続けるぞ」


 奴隷の解放。優しいんだな魔王は。自分のために行動することもあるけど、基本的には人のために行動するんだな。今の時代に奴隷制度なんて無くてよかったよ本当に。

 帯谷はなんのギフトを貰ったのかわからないが、魔王よりかこの時点では弱いのは確かだな。もしかしたら俺と同じで何も貰ってない可能性もある。

 地球の世界じゃ面識無さそうだし、別々の場所から転移したのか?情報が足りなくてわからん。

 この世界に来てから魔法が使えるようになったか。これも俺とは違うな。俺は魔法は疎か、魔力を操ることもできん。そういった点では、魔王は恵まれてるな。異世界転移の特典みたいなもんで、知恵の力?ってやつと魔法が使えるようになってる。力が強くなったのは魔法が使えるようになった副産物か?

 この国の騎士たちも魔力強化ってやつで人とは思えない力出してるしな。


「追記、この本をレイシアちゃんに託します、か。これで確定だな。魔王は俺と同じ世界の出身で、初代国王とも仲が良かった。建国にも一枚噛んでるだろう。なあ、アンリ。魔族ってのは何だ?」


「そうだね。君ほどではないが黒っぽい髪に黒っぽい瞳をしていて、自由気ままにヒトの生活を脅かす存在かな。正直、本に書かれている魔族とは印象が違いすぎて驚いているよ。まあ我が国の騎士であれば勝てないこともない。教会でも討伐実績はあるんじゃないかな。だが強いよ魔法とは異なる異能持ちだから魔封石も効かない」


「そんなメチャクチャなやつ量産してんのかこいつ。でもなーこんな優しそうな人間について行って、そんな性根の曲がったやつが出来上がるのかは疑問だな」


「それは同感だ」


「どうだ?目ぼしい情報はあったか?」


「素晴らしいね。口伝は確かだったと証明できたのだ。なあ、クレイヴァン卿」


「え、ええ。私も正直驚きを隠せません。口伝は口伝そう思っておりましたから。素晴らしいお方ですな」


「さて、この調子で次の本も読み進めてもらいたいが、少し休憩かな」


「悪いな。かなり読み辛いから疲れるんだわ」


 いやー、目と頭が疲れた。読みづらいったらありゃしないこの本。気になるのは読まれる前提で、ある程度書いてるってところか。知恵の力ってやつで、自分みたいなやつがまた現れるって知ってたのか?わからん。わからんことだらけだ。魔王が助けた魔族になった人はどこに消えたんだ。

 討伐実績があるってことは、寿命はないのも同然なのか?山奥にでも隠れてひっそりと暮らしてるのか?


「もう大丈夫だ。気を取り直して進めよう」


「すまないが、頼めるか」


「わかった」


 小汚い日記と書かれた本の表紙を開く。

 さっきとは打って変わって、日記の文字はきれいな文字になっていた。さっきの文字が汚いってわけじゃないが断然こっちのほうが読みやすい。きれいな日本語だ。だが内容は暗かった。

 ところどころに挿絵が挟まれていて、それを研究するだけでもなにか魔法を習得出来るのかもしれない。俺には全くわからないが。

 挿絵を見てアンリとクレイヴァン卿は苦い顔をしている。見る人が見ればなにかわかるんだな。あんまりよろしいものではないようだが。

 この本の解読は難航してる。アンリやクレイヴァン卿がところどころにストップを掛けてくるためだ。実際、この本は問題が多い。一冊目と違って文体は丁寧であるが、内容は丁寧とは程遠い。激情を感じる。


「この本の内容聖国は知っていると思うか?」


「いや、この本の挿絵を見る限り、禁忌の死霊術について記された本っていう認識だろうね。本の内容を知っていれば、全力で奪還しに来るかもしれない」


「そりゃそうだな。この本にはそれだけの価値があると思うぞ。読めればだけど。それより、アンリ。これからのことを考えたほうがいいんじゃないか?」


「そうだね。まあ、正直言って知らん顔して返しちゃえばいいんじゃないかとも思ってる」


「いいね、それ」


「……それはよくありませんな」


 この本には、主に死霊術。禁忌についてと、勇者の悪行について書かれていた。

 他にも、どうして魔王と勇者なんて名前がつけられたのか等。魔王本人はかなり納得がいっていなかったらしい。

 まあそれもそうだ。魔王のイメージは悪い。そんなイメージを持つ魔王なんて呼ばれ方をしたら誰だってキれるな。

 アンリとクレイヴァン卿が青い顔をしているのをよそに、パラパラとページを捲る。ページを最後まで捲り、最後の一文が目に入った。


「アンリ、聖国はこの本の内容を知らない。知っていたら今とは違う形になってるはずだ」


「なにか書かれていたのかい?」


「ああ、それは——」


 ・・・・・・・・・


 カール大司教は勤勉だった。幼い頃から教会のために働き、徐々に階級を上がっていき今では大司教だ。教会の集金など横に広い顔を持つカール大司教が行っている。彼がいなければ教会は回らないと言っても過言ではない。

 だが彼はおっちょこちょいなのだ。大司教ともなれば戦闘面でも優秀なのだが、彼は大司教の中でも下から数えたほうが早い実力しか無い。それでも大司教でいられるのは彼の勤勉さ故だ。


「カール大司教、クラウス枢機卿がお呼びです」


「わかった。今行く」


 カール大司教が後ろを向いた瞬間に司祭はカールに洗脳魔法をかける。

 虚ろな目をしたカールは、枢機卿の部屋までふらふらと歩いていく。


「お呼びでしょうか、クラウス枢機卿」


「ああ、カール大司教。国から持ち出された本の在処がわかった。レイシア王国だ。急ぎ、レイシア王国に司祭を向かわせろ。私は暗部を向かわせる」


「わかりました。クラウス枢機卿。失礼いたします」


 部屋を出てはっと我に返る。


「ん?枢機卿の部屋の前?私は何をしていたんだ?おっと、いかんいかん大事な本の場所がわかったのだな、急いで司祭を送らねば。さて人選は誰にするか……おお、マリーがいいな。よし早速手配するか」


 るんるんと廊下を移動するカール。そうしてマリー司祭の部屋の前まで行きノックをする。


「マリーいるか?私だ、カールだ」


「はい、ちょっと待ってください」


 部屋の中から凄い音が響いている。一体何をどうしたら呼ばれただけでそんな音が出るのか。

 音が鳴り止むと司祭の服に身を包んだ赤茶色の髪の女性が出てきた。


「マリー、君にはレイシア王国に行ってもらう。我が国から持ち出された大事な本が、レイシア王国で見つかったと情報があった。準備でき次第向かうように」


「わかりました」


 シャキッと返事をするマリー司祭。その調子で部屋の掃除もしてくれればいいのだがとカールは思う。

 マリーと別れ、自室に戻る最中にカールはふと思う。


「他になにか言っていたか?忘れるってことは大事なことでもないか」

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