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Lost19 二人の魔王  作者: JHST
第十章 収束する戦果
97/115

⑩決め手の行方

――――――――――


 タイサは暗闇の中で目を開ける。

 体に痛みはないが、手足を、いや全身を動かす事ができなかった。肌への触角はあり、手足を失った訳ではない。力を籠める事ができ、筋肉への損傷があった訳でもない。

 まるで何かに包まれている気がしたタイサが顔を左右に向けると、視界はレンガや木片等で埋め尽くされており、自分が瓦礫にうずまっていた事を理解した。


「………一体俺に何を見せたいんだ」

 黒の剣、それとも鎧の方か。この二つが手元に揃ってからというものの、タイサは不定期に決まった夢を見る事が増えてきた。

 だが、夢というよりも記憶に近い現実感がある。タイサは、何度か見る内に、魔王となった青年の記憶ではないかと感じ始めていた。

 

 ようやく意識がはっきりとしてくる。

 タイサは自分がシドリーを庇い、鉄巨兵の一撃を受けた事までを思い出す。

「使うか………」

 このままでは勝ち目はない。タイサは黒の剣を使う覚悟を決めた。


「魔王様!」

 瓦礫の上からシドリーの声が聞こえてくる。タイサは腹部への圧迫感が強まり、瓦礫越しに自分が踏まれている事を理解し、彼女との距離を測る事に成功する。

「こ、ここだ。今、丁度思いっきり踏まれてる所だ」

「す、すみません!」

 腹筋に力を入れ、押し潰されないように声を上げる。彼女もその声に気付き、瓦礫をどかす音が振動と共にタイサの耳に伝わってくる。

 視界が徐々に明るくなり、タイサの顔が瓦礫から解放される。大きな深呼吸と合わせて、タイサの視界にシドリーの顔と晴れ始めた空が半分ずつ見えてきた。


「ご無事ですか?」

「ああ、何とか………悪いが、もう少し瓦礫をどかしてもらってもいいか?」

 タイサの指示で、シドリーが手足に乗った瓦礫を動かし始める。その間、タイサはアモン達が時間を稼いでくれている報告を彼女から聞き、自分から動けるようになると、体を瓦礫から起こした。


「魔王様………もはやこの窮地を抜けるには」

「分かっている」

 瓦礫から這い出たタイサは、鎧や体に付いた埃を払い、シドリーの言いたい事を汲み取る。

「だが、その為にも、まずは投げた騎兵槍(ランス)をこの手に戻す必要がある」

 黒の剣が封じられている騎兵槍(ランス)は、エコーを援護する為に投げ放ち、恐らく今は彼女の手にある。同じ広場にいるが、その位置は鉄巨兵を挟んで遠く反対側にあり、容易に取りに向かう事はできない。


「では、その役目を私が―――」

 シドリーが言い終えようとしたその時、アモンの声が広場に響き渡った。


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