⑩決め手の行方
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タイサは暗闇の中で目を開ける。
体に痛みはないが、手足を、いや全身を動かす事ができなかった。肌への触角はあり、手足を失った訳ではない。力を籠める事ができ、筋肉への損傷があった訳でもない。
まるで何かに包まれている気がしたタイサが顔を左右に向けると、視界はレンガや木片等で埋め尽くされており、自分が瓦礫にうずまっていた事を理解した。
「………一体俺に何を見せたいんだ」
黒の剣、それとも鎧の方か。この二つが手元に揃ってからというものの、タイサは不定期に決まった夢を見る事が増えてきた。
だが、夢というよりも記憶に近い現実感がある。タイサは、何度か見る内に、魔王となった青年の記憶ではないかと感じ始めていた。
ようやく意識がはっきりとしてくる。
タイサは自分がシドリーを庇い、鉄巨兵の一撃を受けた事までを思い出す。
「使うか………」
このままでは勝ち目はない。タイサは黒の剣を使う覚悟を決めた。
「魔王様!」
瓦礫の上からシドリーの声が聞こえてくる。タイサは腹部への圧迫感が強まり、瓦礫越しに自分が踏まれている事を理解し、彼女との距離を測る事に成功する。
「こ、ここだ。今、丁度思いっきり踏まれてる所だ」
「す、すみません!」
腹筋に力を入れ、押し潰されないように声を上げる。彼女もその声に気付き、瓦礫をどかす音が振動と共にタイサの耳に伝わってくる。
視界が徐々に明るくなり、タイサの顔が瓦礫から解放される。大きな深呼吸と合わせて、タイサの視界にシドリーの顔と晴れ始めた空が半分ずつ見えてきた。
「ご無事ですか?」
「ああ、何とか………悪いが、もう少し瓦礫をどかしてもらってもいいか?」
タイサの指示で、シドリーが手足に乗った瓦礫を動かし始める。その間、タイサはアモン達が時間を稼いでくれている報告を彼女から聞き、自分から動けるようになると、体を瓦礫から起こした。
「魔王様………もはやこの窮地を抜けるには」
「分かっている」
瓦礫から這い出たタイサは、鎧や体に付いた埃を払い、シドリーの言いたい事を汲み取る。
「だが、その為にも、まずは投げた騎兵槍をこの手に戻す必要がある」
黒の剣が封じられている騎兵槍は、エコーを援護する為に投げ放ち、恐らく今は彼女の手にある。同じ広場にいるが、その位置は鉄巨兵を挟んで遠く反対側にあり、容易に取りに向かう事はできない。
「では、その役目を私が―――」
シドリーが言い終えようとしたその時、アモンの声が広場に響き渡った。




