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タイサが目を開けると、目の前で漆黒の鎧に身を纏った青年が、純白のドレスで身を包んだ女性の前で跪いていた。
―――またこの夢か。
タイサは驚く事なく、目の前の青年の正体にようやく行き着いた。
青年の後ろでは同じように跪く無数の蛮族、いや魔物達。ゴブリン、オーク、バードマン、アモンと同じ狼の亜人の群れも見て取れる。とにかく種族に関係なく数万の魔物達が銀色の髪を持つ女性の前で忠誠を誓っていた。
魔王軍の結成。
タイサはそう直感する。
そしてタイサが瞬きをするや場面が変わる。
それはどこかの大きな街であった。街には無数の城壁が同心円状、さらには碁盤の目のようにも組まれ、魔王軍数万の進撃を確実に遅滞させていた。街の中心からやや北よりにある城はまだ無事らしいが、魔王軍もまた確実に進軍を続け、街の至る所で煙と血が舞い上がっている。
街には兵士だけでなく、戦士や魔法使い、僧侶などの姿も見えた。彼らは皆若く、同じ制服に身を包んで恐怖と戦いながら一人、また一人と膝をついて倒れていく。
声も音もない世界だが、タイサから見ても彼らが冒険者と呼ぶには統一感があり、冒険者と扱うには駆け出しよりも戦い慣れていない様に見えた。どこかの学生が、無理矢理戦いに駆り出されていると表現した方が、まだ納得できる集団に近い。
漆黒の鎧を着た青年は常に最前線で剣を振るい、桁外れな広範囲の魔法を展開させては数十人の兵士を一斉に打ち倒し、大人の身長よりも分厚い城壁に穴を穿つ。彼の左右では全身骨だけの二足歩行の怪物が立ち回り、大きな口を開けながら楽しそうに両手の大剣を振るい、屍の数を競い合っていた。
数百、数千の人間が死に抗い、誰かの為に、国の為に前へ進むが、異形の者達を阻むには全くと言っていい程に無力であった。
王国の落日。
魔王軍によって国が亡ぶ様を、タイサは不思議な程に冷静に見続けていた。




