⑦悪魔の微笑み
新生派の77柱を撃退したはずの戦局は、絶望的なものに変わった。
空からの奇襲の第一波、東門からの第二波。この時点で敵がタイサ達の戦力を上回っていた。
それでも何とか五分の戦いに持ち込み、敵の幹部達を撃破した。エコーがアンドレアを、フォルカルとカエデでシャックスとアンバレルの兄弟を、アモンとバルバトスはバディンとエリゴールを退ける。
タイサ、シドリーは最も多くの敵を相手にした。べリアル、マルコシアス、ナベリウス、ヴォラークと続けて撃破。オセとボーマはイベロスの指揮とブエルの回復魔法を受けて戦い続け、巨人のロノウェイの両足に致命的な損害を与えた。ブエルの魔力は尽き果て、オセもボーマも満身創痍だが、ロノウェイもまた両膝を地面につけ、矛先の折れた槍を支えたまま肩を揺らしている。
―――そして敵の第三波。
崩れた東門から大通りを進んだ黒鉄の巨人達が中央の広場に姿を現す。
だが巨人といっても生物的な印象はない。それは頭のない絡繰り人形と形容すべき姿であった。
そして、先頭を歩く鉄巨兵の頭部があるべき付け根の部分に、一人の悪魔の姿があった。
「あ、シドっち見っけ!」
フルフルだった。
彼女はシドリーを見つけると、鉄巨兵から身を乗り出して手を振る。そして隣にいるタイサが視界に入ると、一気に不機嫌な表情へと変わっていった。
「………偽魔王までいる」
フルフルは体を戻して両手で何かを掴むと、再び鉄巨兵を動かし始める。
「全ての元凶め………私が終わりにしてやる」
フルフルの操る鉄巨兵達が広場に足を入れる。
「来るぞ!」
タイサとシドリーが両手を構える。
だが策も何もない。タイサ達は徐々に自分達を陰で覆おうとする巨人達の歩みをただ見上げるしかなかった。
だが突如、鉄巨兵の動きが止まる。
フルフルの乗る鉄巨兵の肩が、両膝を砕かれて立てずにいたロノウェイによって掴まれていた。
「何、邪魔する気? え、助けて欲しいって?」
フルフルが小さく笑い出す。
そして鉄巨兵の右手が、ロノウェイの手首を掴む。
「それだと困るんだ。ゴメンね?」
フルフルは満面の笑みのまま鉄巨兵の握る力を強めていき、ロノウェイの手首をへし折った。
巨人が痛みに耐えきれずに叫ぶ。ロノウェイは折れた自分の手首をもう片方の手で握りながら、声にならない音を喉から吐き出した。
「皆には全員死んでもらわないと、残りの人達を説得できないんだってさ」
残り二体の鉄巨兵がロノウェイの左右につくとロノウェイを押し倒し、そのまま両肩を瓦礫の上に押さえつける。
「じゃぁねぇ~」
フルフルの鉄巨兵の拳が巨人の顔を砕く。巨人の顔は下顎から上の原形を留めず、頭部の破片と血しぶきが奥の建物を赤く染め上げた。




