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Lost19 二人の魔王  作者: JHST
第十章 収束する戦果
91/115

⑤空の兄弟 -兄弟と兄妹-

――――――――――


「そ、そんな馬鹿な事が………」

 アンバラスは自分の胸に突き刺さる三本の赤い(やじり)をもっていた矢を睨み付けていた。


 カエデは頭を地面に向けたまま落下し、矢を放った事が決め手となった。

 つい先程まで空中戦をしていた中、宙返りをするフォルカルからカエデが落下した時点で、アンバラスは溶離を確信していた。

 だが、それが故意に落下した彼女の策だったとは夢にも思わず、アンバラスは悔しさを滲ませる。

「この蛮族がぁ!」

 その言葉を最後に、赤い鏃はアンバラスの体内で輝き、爆発する。防具らしい防具を身に着けていなかった彼の体は、上半身を半分以上失った状態のまま、カエデと共に落下した。


「全く………飛べない癖に無茶をする」

 急降下したフォルカルが落下するカエデを下からすくうように自分の背中で受け止める。一方のアンバラスは誰にも助けられる事なく屋根に落下、羽と血を巻き散らしながら転がり、最期は地面に叩きつけられた。

 カエデとフォルカルの二人は、地面に落ちたアンバラスの最期を見つめると、次に屋根の上で怪我をしたまま茫然と全てを見ていたままのシャックスに視線を向けた。


「………あいつも戦う気はないだろう。済まないなカエデ、兄弟の問題に関わらせてしまった」

 自分の兄弟を失い、フォルカルは胸に詰まるものを感じながらもカエデを優先させて謝罪の言葉を送る。

「私は大丈夫です………それよりも」

 それよりも自分が彼の兄を射止めてしまった事を謝るべきか、カエデは言葉を詰まらせた。

 それを感じ取ったフォルカルは、大きく旋回しながら高度を下げる。

「君が謝る必要はない………むしろ何も言わないで欲しい」

「………分かりました」

 二人の会話が途切れる。

 だが、それは互いに気を遣い合った故であった。

 

 カエデが下を覗くと、地上での戦いも終結していた。まだ巨人の魔物が、ボーマとオセと戦っていたが、ついにボーマとオセがロノウェイの片膝を砕く事で、巨人の動きを封じる事に成功していた。


「兄貴達も無事のようです」

「ああ、こっちも仲間は無事のようだ」

 カエデは地上で手を振っている自分の兄に、手を振り返す。


 その時、東門で大きな音が鳴り響いた。

 音は衝撃波となって空気を経由し、空にいるカエデにその振動を伝えに来る。

「………何、あれは?」

 東門に現れた三体の巨人にカエデが目を細めた。

「また、巨人? でもあれはっ!?」

 あれを生物と認識してもよいのか、カエデはそれに代わる言葉をもっていなかった。金属光沢を放っていた巨体に、生物として必要な頭部がなく、まるで子供に見せる人形劇で使う糸繰人形のようにぎこちなく左右に揺れながら前進を続けていた。


「まだ、あんなのが来るなんて………」

 早く仲間に伝えなければ。カエデはフォルカルと視線を合わせて頷くと、高度を一気に下げた。

「兄貴!」

 カエデが叫んだ瞬間、二人の頭上に雷が落ちた。

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