⑯空の兄弟 -パートナーの差-
「シャックス!」「カエデ!」
フォルカルとアンバラス、互いが相方の名を叫んだ。
アンバラスが呼んだシャックスは彼の背後から飛び上がると、右手のタネガシマをカエデに、左手のタネガシマをフォルカルへ向ける。
対するカエデも、シャックスの動きを鋭い眼で追いかけ、両手のタネガシマに前後の差をつけて突き出し、シャックスに向けて銃口を向けた。
「何ぃっ!」
二丁とも自分に銃口が向けられた彼の表情が凍り付く。
それでも引く訳にもいかず、互いの指が引き金を引いた。
ほぼ同時に響き渡る銃声、そしてまとわりつく白煙。
「ぐうぅっ!」「くっ!」
シャックスの両肩がカエデによって打ち抜かれた。
一方のシャックスが放った鉄球はカエデの右頬を掠る。さらに、フォルカルを狙った鉄球は、カエデが狙って射線に置いたタネガシマの側面に当たり、銃身の木片や鉄の備品を散らしながら武器を失った。
「「まだだぁ!」」
相方の攻撃が決定打にならなかった事を予測していたフォルカルとアンバラスの二人が、互いの両手を弾き合うと、再び両手で相手を狙い合う。アンバラスは両脇を絞めて石剣を引いて構え、フォルカルは体を横にして剣を前に、タネガシマを後で構えた。
まずフォルカルの長剣とアンバラスの石剣が激しく打ち合う。互いに噛み合った剣は火花を散らして擦り合いながら互いに接近し、二人の肩を刀身が僅かに斬り裂く。
だが二撃目はフォルカルのタネガシマよりも、アンバラスのもう一本の石剣の方が速かった。フォルカルが狙いを定めながら銃口を向ける前に、彼は既にフォルカルに向けて石剣を突き出した。
だがその石剣をカエデは持っていた最後のタネガシマを犠牲にして振り払い、アンバラスの攻撃を中断させる。
「ありがとう、カエデちゃん!」
フォルカルの銃口が、アンバラスの腹部に当てられた。
「くっ!」
「これなら避けられまい!」
フォルカルが引き金を引く。
アンバラスの腹部は鉄球によって貫かれ、軽装の服を赤く染まっていく。ついには腰から赤い雫を地上へと落とし始めた。
「蛮族の………小娘がっ」
アンバラスが腹部を押さえるが、その程度では出血は止まらない。銃創は指が入る程の穴であり、それは背中にまで続いており、アンバラスの薄い布地を両方から急速に染め上げていく。
「兄さん!」
「煩い! お前は黙っていろっ! この役立たずが!」
両肩を打ち抜かれ、屋根の上から止む無く二人の姿を見上げていたシャックスだったが、アンバラスは激情して『お前のせいだ』と怒鳴り散らす。
「くそっ………殺してやる! フォルカルも、そこの蛮族の小娘もだ! 空中で体を切り裂いて、中身を地面にいる奴らに撒いてやるぜ!」
アンバラスは止血を諦め、赤くなった手を握るとそのままフォルカルとカエデに向かった。




