⑥孤狼の戦い -エリゴール戦-
「まさか77柱同士で、殺し合う日が来るとは思わなかったぜ!」
空中からの蹴りを片手で受け止められ、アモンはその接点から態勢を変えて空中で踵を落とす。
だがその一撃も手を離したエリゴールに数歩下がられて不発に終わる。空振りの一撃による風圧は石畳をめくり上げさせ、細かい破片を舞い散らせた。
「何を今更。元々我々は、常に上位を目指す為に戦い続けてきたのではないか」
強さこそが正しさを証明する方法。エリゴールは両手指の先から小さな炎球を生み出し、それを交互に前へと振り払う。
「そうかい! んじゃぁ、心置きなく殺らせてもらうぜ!」
未だに地面に足をつけられずにいたアモンは、振り下ろした足をそのまま後ろへと運び、その勢いで体を捻る。半回転した体が自然と振り下ろした足を時計回りに回転させ、飛び散った複数の石片を足の裏側で薙ぐように蹴りつけた。
エリゴールの放たれた火球が蹴り出された石片と次々とぶつかり合い、撃ち落とされていく。
アモンがようやく地面に足を付けると、同時にエリゴールは炎で槍を創り出し、互いに一蹴りで間合いへと入り込んだ。
炎の槍による鋭い一突き。アモンはそれを鎖で編まれたズボンの上、突き出した左膝で受け止めた。槍との接点から湧き出た炎がアモンの膝を包むように溢れ出すが、元々炎を得意とする彼は動じる事なく、突き出した膝を伸ばし、曲げた親指の付け根でエリゴールの下顎を突き上げた。
「ぐぅっ!」
エリゴールの赤い髪が後ろへと広がった。
「生憎、熱さには慣れているんでね!」
後方へと右足を下げたエリゴールに、アモンは伸ばした左のつま先で地面を蹴ってさらに接近、切り替えた右足でエリゴールの肩を押し込み、姿勢を崩させて後ろに転倒させる。
蹴った反作用で、アモンが地面からの高さを確保した。
「あばよ」
落下に合わせて、地面に背を付けていたエリゴールの首を狙う。いかに77柱といえど、細い首を狙われては無事では済まない。アモンは自分の体重を全て乗せて踏み潰した。
―――はずだった。
相手との接触の瞬間、アモンは予想もしない方向から炎の塊に弾かれ、エリゴールから距離をとられるように吹き飛ばされる。
炎の塊が空気中で消えると、中から赤い長髪の少年が姿を現した。
「お前っ! おぃ、オセ! しっかりと相手をしてろ!」
「うるさいな! こっちだって必死なんだよ!」
遅れてオセがアモンに合流する。
エリゴールも起き上がり、弟のバディンと合流する。
「兄者。油断しちゃ駄目だよ」
「ふ………済まんな。だが、助かった。後でお菓子を奢ってやろう」
命のやり取りの感謝が菓子一つ。エリゴール達にとっては何気ない会話なのか、バディンが『それは楽しみだ』と小さく笑っていた。
「さぁ、やる気を出していこうか!」
言葉と同時にバディンの姿が消えていた。




