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Lost19 二人の魔王  作者: JHST
第九章 決戦
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⑥孤狼の戦い -エリゴール戦-

「まさか77柱同士で、殺し合う日が来るとは思わなかったぜ!」

 空中からの蹴りを片手で受け止められ、アモンはその接点から態勢を変えて空中で踵を落とす。

 だがその一撃も手を離したエリゴールに数歩下がられて不発に終わる。空振りの一撃による風圧は石畳をめくり上げさせ、細かい破片を舞い散らせた。


「何を今更。元々我々は、常に上位を目指す為に戦い続けてきたのではないか」

 強さこそが正しさを証明する方法。エリゴールは両手指の先から小さな炎球を生み出し、それを交互に前へと振り払う。

「そうかい! んじゃぁ、心置きなく()らせてもらうぜ!」

 未だに地面に足をつけられずにいたアモンは、振り下ろした足をそのまま後ろへと運び、その勢いで体を捻る。半回転した体が自然と振り下ろした足を時計回りに回転させ、飛び散った複数の石片を足の裏側で薙ぐように蹴りつけた。

 エリゴールの放たれた火球が蹴り出された石片と次々とぶつかり合い、撃ち落とされていく。


 アモンがようやく地面に足を付けると、同時にエリゴールは炎で槍を創り出し、互いに一蹴りで間合いへと入り込んだ。

 炎の槍による鋭い一突き。アモンはそれを鎖で編まれたズボンの上、突き出した左膝で受け止めた。槍との接点から湧き出た炎がアモンの膝を包むように溢れ出すが、元々炎を得意とする彼は動じる事なく、突き出した膝を伸ばし、曲げた親指の付け根でエリゴールの下顎を突き上げた。

「ぐぅっ!」

 エリゴールの赤い髪が後ろへと広がった。

「生憎、熱さには慣れているんでね!」

 後方へと右足を下げたエリゴールに、アモンは伸ばした左のつま先で地面を蹴ってさらに接近、切り替えた右足でエリゴールの肩を押し込み、姿勢を崩させて後ろに転倒させる。

 蹴った反作用で、アモンが地面からの高さを確保した。


「あばよ」

 落下に合わせて、地面に背を付けていたエリゴールの首を狙う。いかに77柱といえど、細い首を狙われては無事では済まない。アモンは自分の体重を全て乗せて踏み潰した。


―――はずだった。

 

 相手との接触の瞬間、アモンは予想もしない方向から炎の塊に弾かれ、エリゴールから距離をとられるように吹き飛ばされる。

 炎の塊が空気中で消えると、中から赤い長髪の少年が姿を現した。


「お前っ! おぃ、オセ! しっかりと相手をしてろ!」

「うるさいな! こっちだって必死なんだよ!」

 遅れてオセがアモンに合流する。

 エリゴールも起き上がり、弟のバディンと合流する。

「兄者。油断しちゃ駄目だよ」

「ふ………済まんな。だが、助かった。後でお菓子を奢ってやろう」

 命のやり取りの感謝が菓子一つ。エリゴール達にとっては何気ない会話なのか、バディンが『それは楽しみだ』と小さく笑っていた。


「さぁ、やる気を出していこうか!」

 言葉と同時にバディンの姿が消えていた。

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