④敵は77柱
「………申し訳ありません。先手を取られました」
イベロスが想定外だと頭を左右に振って、目頭を深く押さえた。
「気にするな。してやられたのは俺の作戦だ」
タイサが鼻で笑い、彼の表情を和らげる。
相手の方が数において勝っている中での、常識外の一手。
敵が奇襲を仕掛けてきたのである。
しかも、降り立った統一性のない顔ぶれと自信に満ちた立ち方から、彼らがただの一兵士ではない事を無言のまま語っていた。
「シドリー、一応聞いておくが、あいつらは―――」
「ああ、全員77柱の者達だ」
タイサの言葉をシドリーが肯定する。
少数精鋭による、敵の司令官潰し。敵もまた、タイサと同じ事を考えていた。
そして、相手の方が早かった。
「………どうやら私達の方が上手だったようね」
存在の中でも一際目立つ魔物。全身を虹色の軽鎧と様々な色の羽で着飾った鳥人間が、女性特有の口調でありながら、随分と低い声で鼻を鳴らす。鳥人間といっても、フォルカルのように人型に羽が生えている訳でも、ケリケラのように腕が翼となった種ではなく、目の前の派手な魔物は、文字通り人と同じ大きさの鳥が立っていた。
「………アンドレア」
イベロスが顔の中心にしわを寄せて呟く。
名を呟かれたアンドレアは、イベロスの表情に満足すると、胸を張るようにして笑い出した。
「どうやら今回はワタシの方が早かったようね………それとも偽魔王の発想かしら?」
タイサの姿を見つけたアンドレアが、目を細める。
「イベロス、シドリー。あいつら全員の特徴は分かるか?」
タイサは小声で背後にいる二人に尋ねた。
シドリーが無言で頷く。
「イベロスと同様、軍の参謀を務めるアンドレア。その左にいる長身で短い赤毛の男がエリゴール、その隣、オセが受け止めた蹴りを放った小柄の男がバティン。全身鎧の隙間から炎を噴き出している騎士がベリアル。そして奥の建物の上で腰を落としているバードマンがシャックス………フォルカルの弟だ」
「五人か………よくもまぁ、大盤振る舞いをしてきたものだ」
五人の77柱による大胆にして確実な奇襲。タイサは敢えて肩の力を抜き、呆れる事にした。
だが、すぐに力を戻し、小さく身構える。
「イベロス。実力差とは別に、人数はこちらの方が多い。お前の指示で相手を見定め、個別に撃破していこう」
連携が取れない程に個性の強い者か、それとも連携を主とする相手か。タイサは判断に困る部分にある程度の見切りをつけさせ、全てをイベロスに委ねた。
イベロスがタイサの言葉に頷くと、即座に組み合わせを決め、タイサ達に指示を放つ。
そして最初の一手をタイサに頼んだ。
「任せておけ」
「隊長………お供します」
タイサの両手で持つ武器に力が入る。それを聞いていたエコーも、腰の鞘を強く握って傾けさせると、つま先や踵で足元の石畳を叩き、靴の調整とと共に踏み出す位置を決定させる。




