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Lost19 二人の魔王  作者: JHST
第九章 決戦
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④敵は77柱

「………申し訳ありません。先手を取られました」

 イベロスが想定外だと頭を左右に振って、目頭を深く押さえた。

「気にするな。してやられたのは俺の作戦だ」

 タイサが鼻で笑い、彼の表情を和らげる。


 相手の方が数において勝っている中での、常識外の一手。

 敵が奇襲を仕掛けてきたのである。

 しかも、降り立った統一性のない顔ぶれと自信に満ちた立ち方から、彼らがただの一兵士ではない事を無言のまま語っていた。

「シドリー、一応聞いておくが、あいつらは―――」

「ああ、全員77柱の者達だ」

 タイサの言葉をシドリーが肯定する。


 少数精鋭による、敵の司令官潰し。敵もまた、タイサと同じ事を考えていた。

 そして、相手の方が早かった。


「………どうやら私達の方が上手だったようね」

 存在の中でも一際目立つ魔物。全身を虹色の軽鎧と様々な色の羽で着飾った鳥人間が、女性特有の口調でありながら、随分と低い声で鼻を鳴らす。鳥人間といっても、フォルカルのように人型に羽が生えている訳でも、ケリケラのように腕が翼となった種ではなく、目の前の派手な魔物は、文字通り人と同じ大きさの鳥が立っていた。

「………アンドレア」

 イベロスが顔の中心にしわを寄せて呟く。

 名を呟かれたアンドレアは、イベロスの表情に満足すると、胸を張るようにして笑い出した。

「どうやら今回はワタシの方が早かったようね………それとも偽魔王の発想かしら?」

 タイサの姿を見つけたアンドレアが、目を細める。


「イベロス、シドリー。あいつら全員の特徴は分かるか?」

 タイサは小声で背後にいる二人に尋ねた。

 シドリーが無言で頷く。

「イベロスと同様、軍の参謀を務めるアンドレア。その左にいる長身で短い赤毛の男がエリゴール、その隣、オセが受け止めた蹴りを放った小柄の男がバティン。全身鎧の隙間から炎を噴き出している騎士がベリアル。そして奥の建物の上で腰を落としているバードマンがシャックス………フォルカルの弟だ」

「五人か………よくもまぁ、大盤振る舞いをしてきたものだ」

 五人の77柱による大胆にして確実な奇襲。タイサは敢えて肩の力を抜き、呆れる事にした。

 だが、すぐに力を戻し、小さく身構える。


「イベロス。実力差とは別に、人数はこちらの方が多い。お前の指示で相手を見定め、個別に撃破していこう」

 連携が取れない程に個性(クセ)の強い者か、それとも連携を主とする相手か。タイサは判断に困る部分にある程度の見切りをつけさせ、全てをイベロスに委ねた。

 イベロスがタイサの言葉に頷くと、即座に組み合わせを決め、タイサ達に指示を放つ。

 そして最初の一手をタイサに頼んだ。

「任せておけ」

「隊長………お供します」

 タイサの両手で持つ武器に力が入る。それを聞いていたエコーも、腰の鞘を強く握って傾けさせると、つま先や踵で足元の石畳を叩き、靴の調整とと共に踏み出す位置を決定させる。

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