②ケリケラ
「シドリー、カ。スマナイガ、ワタシハ、ココニイル」
タイサの足から声が発せられると、シドリーは視線を下に向けた。
「ああ、気配で分かったよ。だが、本当にその姿で良いのか?」
タイサの足となり杖となった同志に向け、シドリーが一応と尋ねる。
「マオウサマノ、メイレイハ、ゼッタイダ」
タイサから気にしなくて良いと言われていたが、バルバトスは演じる事に関して、シドリー達の中では最も忠実な姿勢であった。
バルバトスは流体的な金属生命体という体質上、あらゆる形を作る事ができる。
タイサはデルから聞かされた彼らとの戦いから、バルバトスを装甲兼機動力として用いる事を考えた。彼に自分の足腰を支えてもらうのと合わせて、移動の際は両足に複数の車輪を出して走ってもらう。単純な思い付きではあったが、実行してみると下半身が誰かに締め付けられているという違和感を除けば、思いの外上手くいったのである。
続いてイベロスとフォルカル、カエデの三人が、東の大通りから現れてタイサ達に合流する。
イベロスが胸の前に手を置くと報告を始めた。
「撤退組の部隊が全て洞窟内に入りました。以後、魔王様から預かった地図を頼りに奥へと進む予定です」
「飛行部隊も上空で待機中。言われた通り、限界高度、雲の中で合図を待っている。ケリケラ様の魔法で霧が強く出ている分、雲が低くなって助かったね」
高度を取る程、空気は薄くなる。それでも今は雲の低さからタイサ達の予想よりも随分と楽にはなっていると、フォルカルが説明する。
「だが、その分、気温が低い。上空の連中はもっても一時間か二時間でしょう」
フォルカルが空を見上げると、黒い翼の少女がタイサとイベロス達の間に降り立った。
そして、黒いハーピィのケリケラは、タイサの前で膝をついた。
「ご命令通り、霧と雲を街の周囲数kmに展開させました。あと二時間はこの状態を維持できます」
ケリケラは自分を魔王直属の部下だと名乗った。彼女は魔王と再び会える事を信じ、自分自身を魔王復活の流れの中に敢えて封じ込めていたのだという。
ケリケラが担当していた事象は『金』。人生を変える程の金銭を失う覚悟を見届けた事で、その実体を戻す事が叶ったという。
そして残りの事象を解放するまでの間、持ち主を魔王復活へと導く役割を担う。ケリケラはそう説明している。それしか説明しなかったとも言える。
「それと、東から数匹のバードマンが接近していました」
ケリケラの報告が終わり、彼女は無表情のまま立ち上がった。




