⑩馬鹿と何かは使いよう
オヤジさんは大きな目でタイサの顔を見つめた。
「強度だけなら、既存の防具の組み合わせで作れるだろう。だが防御と重量は切っても切れない関係で、それらは機動と相反する。頑丈になればなる程、重すぎて身動き所ではなくなるぞい」
タイサは簡単に計算した重量をオヤジさんから聞かされると、そのまま顎に手を置いて黙り込んだ。
それは、タイサといえども歩くのがやっとで、しかも一度倒れれば起き上がる事が出来なくなる。それほどの重さであった。
「はっ。そんなんじゃ、ある程度食らってでも、さっさと突入した方が良さそうだ」
アモンが壁に寄りかかったまま手を振り、それ見た事かと鼻で笑う。
「まぁ、最悪それしかないんだが………何か手がないものか」
防御力を維持しつつも十分な速度で動く方法。矛盾を可能にする奇跡の一手が思い付かない。
「そうだ、速度増加の魔法をかけたらどうだ?」
タイサの提案に、バルバトスが顔のない頭を左右に振る。
「ハヤクナリマスガ、イチジテキナモノデス」
常に魔法をかけ続ける事は非効率過ぎると、きっぱりと丁寧に否定された。
「簡単に思いつくなら、今頃凄い防具ができてるはずだぜ。諦めて、いつも通りの格好で行くしかねぇって事だ。それともいっその事、お前を馬にでも括り付けて走らせてやろうか?」
馬に引きずられる魔王が、敵陣に突撃する。アモンは天井に顔を向けて一人で笑っていた。
「もうちょっと真剣にだな。それじゃぁ俺は荷馬車………ん、んんん?」
アモンのやる気のない意見に、タイサが情けない声で返そうとしたその瞬間、脳裏にある事が思い浮かぶ。
「………ドウシマシタカ?」
バルバトスが首を斜めに傾けた。
「アモン、さっきといい、今日のお前はかなり冴えてるな」
「………は?」
天井を向いたまま、アモンの笑い声が綺麗に止まった。
タイサはバルバトスに顔を向ける。
「………マサカ」
「ああ、そのマサカだ」
タイサはバルバトスの左肩に右手を軽く乗せた。




