⑦工房にて
人間だけとなった部屋になり、タイサは改めてエコー達の顔を眺める。
「ついこの間まで、底辺の騎士団と呼ばれていたのが嘘みたいだ」
空気を紛らわせようと肩を上げた。
「行きついた先が、偽の魔王とその手下って訳ですかい? 冗談としてはイマイチですよ」
タイサの下手な愚痴をボーマが拾い、鼻で笑いながら話に色を付けた。
「ですが冗談ではなく、本当な所が笑えません」
拗ねた顔で溜息をつくエコーも流れに乗る。
「本当に勝てるの? 兄貴」
カエデが目を細め、タイサに向けて口を尖らせた。
「………相変わらずのお前達で、助かるよ」
別段空気を和ませる必要はなかったと、タイサは両手を仰いで降参する。
エコー達もそんなタイサの表情を見て小さく笑っていた。
タイサは椅子を引いて立ち上がると胸の前で手を叩き、部屋に響く音を鳴らした。
「全員で生き残るぞ! 各自、準備を怠るな!」
「「「了解!」」」
エコー達も一斉に立ち上がった。
――――――――――
三十分後、タイサは街の南部の工房に足を運んでいた。
カエデは話があるとエコーに呼ばれて部屋を出ていき、仕方なく余ったボーマを誘おうとタイサが声をかけるも、彼は彼でシドリーとの約束があると鼻の下を伸ばして出ていってしまった。
珍しく一人残されたタイサは、寂しさと腑に落ちない心の靄の中、工房の扉を叩く。
「入るぞ」
ここに来ることはタイサにとって初めてではない。先のシドリーとの戦いにおいて、馬車に積んで持ってきた騎士の盾を無理矢理重ね、さらに鹵獲したタネガシマを腰や肩に取り付けられるよう細工してもらった場所がこの工房であった。
中に入ると、すぐに外との温度が逆転した空気が体の前半分に叩き付けられる。
乾いた空気、しかも肌を焼くような風に、思わずタイサの目が細まった。
工房では上半身裸のオークが汗を床に落としながら、鍛冶に必要な鉱石や炉に入れる木材を往復して運んでいる。
奥の炉の前で、小さな老人が椅子に座っていた。老人は自分の顔と同じ大きさの金槌を持ち上げ、迷う事なく決められた場所に振り下ろす。炉によって加熱された金属が赤光りながら金槌によって形を整えられ、抵抗しようと火花を巻き散らしている。
「今日は客が多いな! ちょっと待っておれ、順番じゃ! 順・番!」
老人は金槌を振るい、火花を物ともせず打ち続ける。皮膚は人のような色だが厚みがあり、飛び散る火花すらはねのけている。頭の頂点から耳にかけて禿げており、僅かに襟首と揉み上げの辺りに白髪の塊が残っていた。
タイサが部屋の壁に目を向けると、二人の先客が壁に寄りかかっている。
アモンとバルバトスだった。




