⑤既に少数精鋭
「アモン、お前………」
シドリーが目を大きくさせ、彼の言動に驚いていた。今まで頑なに人間が魔王を演じる事を否定してきた男が、それを認めるような口ぶりを見せる。77柱の幹部達が、アモンの顔をシドリーと同じ表情で視線を向けていた。
その視線にアモンは顔を逸らし、指で鼻を擦る音を立てる。
「馬鹿言ってんじゃねぇ。ここまで来たからには仕方がねぇだろう? おぃオセ、テメェは笑うな」
部屋の空気が変わっていく。
結局、アモンの一声が決断の一石となった。
最後まで硬い表情をしていたシドリーも、彼の言葉に小さくそして何度も頷く。
「………やるか。他に方法がないようだしな」
他の幹部達も覚悟を決めて一度だけ、しかし力強く頷いた。
シドリーが確認を取るようにタイサに視線を向ける。
「人選はどうする?」
洞窟に向けて移動し、奥の集落へと続く秘密の通路に向かうには、タイサの記憶だけが頼りになる。しかし、タイサが魔王として敵陣に突撃する以上、その記憶をタイサ以外の人間に伝える必要があった。かと言って、集落にいる銀龍騎士団に説明し、説得する事を考えると、騎士経験のないカエデでは荷が重すぎる。
タイサはふと隣のエコーの顔を見る。
彼女は顔を横に向けたままタイサの顔を凝視していた。その眼は鋭く、だがどこか暖かいものを感じさせる。恐らく彼女を指名しても、どんな理由を口にしても、エコーは首を縦には振らないだろう。タイサにはそれが分かっていた。
ならばと次にボーマに嫌々視線を向けるが、案の定、彼は重たい頬を吊り上げ、太い腕を無理矢理組んでいる。
困った顔になっていたのか、ボーマはタイサの顔を見ながら、今にも折れそうな椅子を漕ぎながら重そうな手を挙げた。
「隊長、ここは諦めましょうや。少数精鋭っていったら、俺達は全員精鋭ですぜ」
「空からの援護も必要でしょ? 兄貴が魔王でも、危なっかしいのは変わらないんだから、目を離す訳にはいかないよ」
ボーマとカエデの子どもじみた悪い笑みに、エコーは口に手を当てて小さく笑い出した。
「エコーまで………まったく、お前らも物好きが過ぎるぞ」
タイサは額に手を当てる。
結局、撤退組の魔物達は洞窟の奥で待機。敵陣から生還した誰かが、集落に導く事となった。




