表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lost19 二人の魔王  作者: JHST
第七章 共闘
51/115

④狼の覚悟

 タイサは彼女の正論を受け止め、冷静に両手を動かして説明する。

「一見すると馬鹿馬鹿しい程の戦力差だが、全ての敵と同時に戦う訳じゃぁない。こちらが少数であればある程、敵と接する面積は減り、相手にとって戦える人数が限られていく」

 一万という大軍を自由に操る事は難しい。タイサは大軍故の指揮系統の困難さを利用し、さらに相手よりも速く動ける利点を生かし、敵の中心部で暴れる作戦を立案した。


「目標は敵の司令塔のみ。魔王軍77柱を一人でも多く倒せるかが鍵になる」

 偵察で敵の陣形から大よその司令部の位置が把握できるだろうと、タイサは地図の一点を指さす。その答えにシドリー達も否定をしなかった。


 最後に彼女の質問に答える。

「敵が混乱した後、シドリーの力で仲間を全力で上空へと投げ飛ばす。そこをバードマン達が空中で掴み、洞窟がある方角へ撤退する。最後に残ったシドリーは、全力で跳び上がれば………まぁ、何とかなるだろう」

「………無茶苦茶だ。そんな作戦は聞いたこ事がない」

 シドリーは大きな息を口から吐き出すと首を左右に振り、ついでに両手も広げながら背もたれに体を預けた。小柄な彼女だが、勢いが強かったのか、椅子は木の呻き声を鋭くあげる。


 部屋は静かな空気に包まれていた。

 相手の呼吸の音が隣から聞こえてくるかの様に、誰も音を上げなくなっていた。

 だが誰かの言葉を待っている空気ではない。誰一人、目が泳いではいない。全員が全員、必死に打開策を考えようと考えにふけていた。

 その事にタイサが気が付く。

 そして、長く感じる数分が経過しても、状況は変わらなかった。

 

 他に選択肢がないのである。

 作戦と呼んで良いのか。結果として、タイサの作戦しか具体的な案が提示されなかった。

 それでも全員が納得し、満場一致という案でもない。勝てるかどうか分からない、今までそんな戦い方をしてきた事がないというシドリーの煮え切らない表情、相変わらずだというエコー達の諦めと苦笑を混ぜた反応が両極端に存在していた。


「あぁ、もう止めだ止め! 我慢できねぇ」

 アモンが部屋の空気を砕くように声を張り、耳の裏を乱暴にかき始める。

「何を辛気くせぇ空気を作ってやがる。葬式じゃぁねぇんだからよ?」

 彼は壁に沿って立っていた体を起こして前に出ると周囲を一瞥し、天井からテーブルへと顔を上下させて声に波を付けた。


「だが、負ければ全てが終わるのだ。誰もがお前のように楽観的にはなれん」

 シドリーが短絡的に発言するアモンを一喝した。やや感情的でもあったが、イベロス達はいつもの言い争いだと眉を上げ、冷ややかな目と溜息で二人のやり取りを交互に見つめていた。

 だがアモンは司令官であるシドリーの言葉を、一笑に伏した。

「だが他に選択肢がないんだろう? だったらやるしかないんじゃねぇか」

 それに、と付け加える。

「形はどうあれ、こいつを魔王様として担ぐんだ。命令には従わないと、示しがつかないんじゃないか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ