②一つの策
「取り敢えず、王国と合流するっていう手はダメですかい?」
ボーマが手を挙げた。
「いや、まだ危険すぎる」
タイサがシドリーよりも先に答える。
「デル達がどこまで動けているか分からない以上、魔王軍を王都へ近付ける事はできない。最悪、事情を知らない王国騎士団と後背の新生派から挟まれる事になる」
シドリーとイベロスもその言葉に頷いている。
「その通りです。つまり我々の当面の目標は、デル殿が王国騎士団を説得し、我々と共闘できる戦力と合流するまでの間、持ち堪える事です」と、イベロス。
だが、その具体的な方法が思いつかない。
名だたる幹部達が口を開けずに、時間だけが過ぎる。
「タイサはどう思う? 何か案があるのではないか?」
昨日、今日とイベロスと情報を交換していた事をシドリーが引き合いに出し、思う所があるのではないかと尋ねた。
「まだ一つしかない」
「………その一つを聞いてもよろしいですか? そこから何かが閃くかもしれません」
イベロスが全員を代表するかのように口を開く。
タイサは目頭を強く押さえ、頭の中を整理しながら話し始めた。
まずオセの名前を呼ぶ。
「覚えているか? 君がデルと戦った場所、森に囲まれた集落があった所を」
「ああ、覚えている」
次にイベロスの名前を口にする。
「この街から北東の森に、小さな洞窟がある事は?」
「ええ、周囲の偵察は随分前に済ませています。ただ、奥までは確認していません」
その二つがどう繋がるのか。全員がタイサの言葉を待った。
「オセが見た集落と、あの洞窟は繋がっているんだ」
そしてあの集落では、デルの帰りを待つ銀龍騎士団が駐留している事を伝える。
「つまり、その洞窟を抜けて集落へと向かい、騎士団と合流すると言いたいのか?」
シドリーの答えに、タイサは何度も頷く。
「そうだ。戦力差がある中で籠城しても勝ち目どころか逃げ場すらない。しかし、デル達の説得が上手くいくまで、こちらの戦力を温存させる必要がある。イベロスが先程言った通りだ」
だが問題もあった。
「単に逃げただけでは、新生派に進軍の自由を与え、さらに逃走したと評されれば、効果が出ている魔王の存在を弱体化させる事になる」
絶対的な力を持つ魔王が戦わずして街を捨てて逃げたとなれば、新生派を盛り上げる格好の材料を提供する事になる。そうなれば、中立派が再び新生派に取り込まれる恐れがあった。
「だから、逃げるだけでは駄目なんだ」
タイサがこの作戦を率先して発言できなかった理由がそこにあった。




