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Lost19 二人の魔王  作者: JHST
第六章 人魔決闘
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⑥新生魔王軍

「テメェがここにいるって事は、ついに到着したって事か!?」

 アモンの体毛が放電によって逆立っている。だが、当のフルフルは動じる様子もなく、振り下ろした剣を再度動かす事もなく、目の前で叫ぶアモンを眺めながら、子どものように笑い始めた。


「そうだよ。一応君達にも機会を与えるようにって言われたから、ワザと遅れてきてみたけれど………どうやら、あまり成果は出なかったようだね」

 そう言ってフルフルは、振り下ろした左手の人差し指と中指の間を左右に開く。すると、地面に突き刺さっていた雷剣は、彼女の指の動きに合わせるように二つ割れ、地面に対して水平に家を斬り裂きながらアモンの体を狙った。


「そしてその先方が、よっと! お前って訳か!? 今まで色々な奴らを利用して、都合が悪くなれば裏切ってきたお前が! 最後に俺達も裏切った、あの泣き虫根暗女が、今じゃぁ新生派のお使い係になるなんてな!」

 アモンが体を捻り、真横に迫る雷剣に対して円を描いて飛び越える。

「あぁ、もう! 本当に言葉だけはムカツク犬っころだよ!」

 フルフルは開いていた二本の指を再び合わせ、手首を上から下へと曲げた。分かれていた雷剣は、彼女の指によって合流し、一本の剣となってアモンの直上へと振り下ろされた。

「糞がっ!」

 アモンは咄嗟に籠手のある両腕で防ごうとしたが、捌き切れずに後方に勢い良く弾かれ、家屋を次々と貫くように弾かれた。


 タイサは二人の会話を聞きながら、状況を概ね理解する。

 フルフルは手についた水滴を払うようにして腕を振り、雷剣を消失させると、家屋の下敷きとなったアモンを見て声高く笑い、体を震わせていた。

 その様子を、タイサは眉間にしわを寄せ、目を細める。


 高飛車な笑いを続ける彼女の横顔に、小石が当たったのはこの時だった。


「………何、今のは」

 フルフルは音を立てて地面に落ちた小石、爪程の大きさのものが自分の足元に落ちて転がる様を見て、初めて自分に石が投げられた事を理解した。

「石? この魔王軍77柱の私に、石を投げたの?」

 手で頬に触れると、指先に砂が付着する。

 フルフルはシドリーへの攻撃を止めると、ゆっくりと周囲を見渡した。

「誰!? この私に石を投げた愚か者は!? 例え同胞と言えど、消し炭にしてあげるわ!」

「うるせぇなぁ………そんなの、目の前の俺しかいないだろう?」

 フルフルは正面を向き直すと、騎兵槍(ランス)を肩に担ぐタイサが、自分に親指を向けていた。

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