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Lost19 二人の魔王  作者: JHST
第六章 人魔決闘
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④決着

「隊長!」「司令官!」

「兄貴!」「姉さん!」「大将!」

 それぞれの陣営から二人を心配する声が上がり、多くの者達が城壁の階段を降りて爆発のあった場所へと向かう。


「ありゃぁ、イベロスの旦那は気絶してるね」

 バードマンのフォルカルが羽を広げて城壁から飛び降りると、吹き飛ばされ樽の残骸に頭をから突っ込んでいる兎の尻を見つけた。

 続いてアモンが真っ先に大通りへ出ると、何かを我慢するように立ち止まった。そして後から追いかけてくるエコーやカエデ達、それだけでなく自分の司令官を心配しに来た他の魔物の前で両手を広げて、立ち塞がった。

「まだ決闘は終わっていねぇ! これ以上先に行ったら許さねぇぞ!」

「でも、あれだけの爆発………いくら兄貴でも!」

 カエデがアモンの前で涙目で訴えたが、彼は拳を握りしめ、血走った目で睨み返す。

「うるせぇ! うちの大将が負ける訳がねぇ!」

「そっちじゃないって!」

 話が通じない。カエデは構わないと一歩を踏み出そうとしたが、一緒に下りてきたエコーがカエデの肩を掴み、静止させた。


 エコーは不安な表情で見つめて来るカエデに首を左右に振って応える。さらに、アモンの目に対しても、自信に満ちた不敵な目で睨み返した。

「私達の隊長が、負けるはずがありません」

 その言葉が届いたのか、門とは反対側にあった建物の残骸の頂点が音を立てて崩れ落ち、中から人の腕が突き出る。


 それは人の腕であった。


 タイサは重くのしかかっていた残骸をゆっくりと退けると、頭を押さえながら、後ろや横に体を揺らしつつも立ち上がる。

「畜生。流石に無茶しすぎたか………体が無事でも………脳が揺れているぞ。くそっ、まっすぐに歩けねぇ」

 千鳥足で二歩、三歩と進むが、ついには瓦礫に足を滑らせ、タイサは大通りに顔から落ちた。それでも何とか立ち上がり、目の前に落ちていた騎兵槍(ランス)の一本を杖代わりにして姿勢を安定させる。


「………タネガシマの着火材である魔石を私の魔力で暴走させたのか………よくもまぁ………次から次へと………思いつく」

 城壁の石垣にめり込んでいたシドリーが片目をつぶった状態で壁から這い出てきた。メイド服が随分と破け、頭に付けていた白いカチューシャはいつの間にか無くなっていた。白い体毛も、元の色を探す方が難しく、ほとんどの場所が黒く焦げているか、血で赤く染まっているかのどちらかだった。

 彼女も二歩、三歩と進むが、大通りに空いた小穴に足を引っかけて額から転ぶ。それでも彼女は震える両手をついて立ち上がり、割けた額から血を流しながらも両足を開いて立ち上がった。


 タイサもシドリーも、爆発した大穴を挟んで立ち止まる。


「………どうした、回復魔法を使っても汚いなんて言わないぜ?」

 タイサが震える指でシドリーを挑発する。

 それに対し、シドリーは鼻で笑って返した。

「残念だが魔力切れだ。爆発の瞬間に、私の両足を通じて地面に八頸を連続で放った。噴き上げた土砂と石で爆発の直撃から逃れる事はできたが、回復まで魔力を残そうと考える余裕はなかったよ」

「よくもまぁ………思いつく」

「ふん、お互い様だ」

 二人は呼吸に近い速度で肩を上下に震わせ、小刻みに笑う。

 タイサはゆっくりと目を瞑って頭の揺れ具合を確かめる。先程より幾分マシになってきたが、それでも激しい動きができない状態だと悟る。


「お前にとっては、これだけの爆発をもってしても怪我の内にも入らないのか。飛び道具としての意味をもたせつつ、タネガシマをあのような奇策で戦わせる事を悟らせないよう戦った手腕は見事だった」

 シドリーが両膝をつく。

 反対に、タイサは杖代わりにしていた騎兵槍(ランス)を地面から引き抜き、体を揺らしつつも二本の足で立っていた。


「どうする? まだやるかい?」

 汚れた体のまま、タイサが疲れた表情で冗談を投げかける。

「………いや、止めておこう」

 シドリーはそう言い終わると目を瞑り、後ろに姿勢を崩した。

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