①かくして二人は向かい合う
ゲンテの東門前、東西を繋ぐ大通りで、タイサとシドリーが向かい合う。
すぐ上の城壁では、見物客と呼べる魔物達でごった返している。見るだけならば、大通り沿いに立つ建物の屋根が絶好の一等地なのだが、シドリーの強さを知る者において、そこで観戦する魔物は皆無だった。
エコー達も、77柱達のいる魔物に交ざり、タイサの勝利を願っている。
周囲には、タイサの事を魔王の力を継ぐと噂された人間として報告されており、それを確かめる為に、シドリー司令官自らが一騎打ちの決闘を行うという説明がされていた。
「相変わらずの重装備だな。ハイオークでも、そこまでの装備は見た事がない」
シドリーはタイサの装備を見て思わず苦笑する。
「お言葉に甘えて、色々と借りる事にしたのさ」
タイサは魔王の鎧はそのままに、両手に騎士の盾を二枚ずつ、腕と肩に鎖で無理矢理縛り重ねていた。加えて黒の剣が納められている騎兵槍と通常の騎兵槍を左右に持ち、さらに両肩には魔王軍から借りたタネガシマを三丁ずつ翼の羽のように備え付け、左右の腰にも帯剣するように一丁ずつ身に付けていた。
過重量級の超重装備。速さの全てを放棄した姿である。
「言っておくが、タネガシマ程度の速さでは私を捉えられないぞ」
「分かってるさ、これでもどうやって勝つか考えた上での装備なんだ。早い所始めてくれないか」
それでも勝つと言い切るタイサに、シドリーは鼻で笑って返す。そして肩を回して骨を鳴らすと、両手の上から白銀の斧を一本ずつ落としてそれを掴み、一回転させる。
「では、これより決闘を行う!」
見届け人として、副官のイベロスが両者の間に立つ。
そして数歩下がりながら腕を上げきる。
タイサとシドリー、それぞれが前傾の姿勢をとった。
イベロスの腕が降ろされる。
「始めっ!」
タイサの目の前に、二本の斧がハサミの様に左右から挟み込む形で空気を斬り裂いて迫っていた。
「速い」
タイサは地面に手を付いて頬を擦り付ける程の低さをとり、白銀の斧を盾の上で滑らせるように受け流す。盾の表面が薄く削られたが、斧はタイサの上方を通過する。
だが正面にはシドリーの姿はない。代わりにタイサは自分の影が大きくなっている事に気付く。
経験による無意識の後退。タイサが咄嗟に後方に飛び退けると同時に、攻撃を縦回転へと変化させ、空から落下してきたシドリーが、両手の斧で石畳ごと地面に大穴を開けた。
無数の破片がタイサだけでなく周囲の家屋に次々と穴を開けていくが、それを気にする余裕はない。タイサは騎兵槍を地面に突き刺すと、腰のタネガシマを抜いて引き金を引く。




