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Lost19 二人の魔王  作者: JHST
第五章 魔王就任
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②軍務か姉妹か

「仮にその伝承が本だと仮定しても、この剣は黒い霧をまだまだ吸い続けている。そして十分に集めたとしても。誰が犠牲になるかも決まっていないが………その点についてはどうするつもりですか?」

 タイサは相手から全てを聞き出そうと尋ね続けた。

「そもそもの話、この剣を扱う事ができなければ意味がない」

 剣を抜いただけでも、全ての恐怖が生きとし生けるものに襲い掛かり、その動きを止める。身に付けている装備ですら悉く黒い霧に変わる。見た事はないが、耐性のない人間が触れれば、自分自身が黒い霧に変換される事くらいは容易く想像できる。

 タイサは自分の様に、耐性が高い者ならば耐えられるかもしれないと、その可能性を伝えた。


「………私が扱ってみるつもりだ」

「シドリー姉さん!?」

 勢いよくオセが立ち上がった。

 姉のシドリーは、それを静止させるように手を前に出し、妹にこれ以上の発言を止めさせる。


「この魔王軍の司令官は私だ。この中では最も力がある………もし私でも扱えないのであれば、ここにいる者達でも扱う事はできないだろう」

「………良いのですか? 失敗すればあなた自身が霧散するかもしれませんよ」

 タイサは最も近くで見て来た者として彼女に確認する。

 だがシドリーの決意は揺るがなかった。

 彼女は首を左右に振り、堂々と、しかし表情を柔らかくさせて話す。


「決して無駄死にではない。例え私が黒い霧となっても、その力は魔王様復活の為に使われる。臣下として、これ以上嬉しい死に方はないだろう」

 自分程の存在が吸収されれば、条件の一つを満たせるかもしれない。シドリーはそこまで言い切った。

 そしてオセに顔を向けた。

 その顔は司令官としてではなく、不出来な妹を見る姉の顔であった。


「すまんな。お前にはまだ話していなかった」

「まだって事は………」

 オセが慌てて周囲を見ると、全員が口を閉ざしていた。

 アモンやバルバトスは腕を組んだまま沈黙し続けている。バードマンは目を軽く擦るとゴーグルをかけて、表情そのものを隠した。


「全員には既に話を通している。私に万が一の事があれば、イベロスが代わりに皆の指揮を執る。何も問題はない」

「そういう事じゃねぇよ!」

 オセは感情を剥き出して、手前のテーブルを叩き壊した。


「落ち着け。これは姉妹の問題ではない。魔王軍の、ひいては私達の国の未来がかかっているのだ。何度も言っているが、お前も77柱ならば使い分けるべきだ」

「魔王軍の前に、姉妹の問題だよ! もしここで姉さんを失ったら、俺は………一人になっちまうじゃあねぇか!」

 既に四姉妹の半分が戦死している事は、タイサ達も知っている。それが自分達人間の手によるものであり、タイサ達は複雑な気分で姉妹の言い合いを見つめていた。

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