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Lost19 二人の魔王  作者: JHST
第四章 終わりの始まり
31/115

⑥戦友の言葉

――――――――――


 次に目を開けると、タイサの目の前には寝息を立てているエコーの顔があった。

 部屋は明るいまま。しかし窓の外は未だ暗闇に包まれている。どうやら互いにテーブルを挟んで目を閉じてしまったらしい。


「………何故またこんな夢を」

 理由は分からない。だが、記憶にない夢を見せられ、しかし現実味の強い夢にタイサは言いようのない不安に駆り立てられていた。

 一度ならまだいい、だが二度目であった。

「何かを伝えたいのか、それとも考えすぎか」

 悩みながらタイサは寝息を立てているエコーの顔を見る。勇気を振り絞って彼女の前髪を撫でてみたが、エコーは全く起きる素振りがなかった。今どんな夢を見ているのか、心なしか彼女が微笑んだようにも見える。

 タイサはエコーの顔を見て安心すると椅子の背に体を預け、再び目を瞑る事にした。



 翌朝。

 タイサは眠い目を擦りながら、身だしなみを整えて部屋を出る。


「おっと、隊長じゃないですか。おはようございま………あ、あぁ、副長もご一緒で。これはこれは」

 廊下で鉢合わせしたボーマは同じ部屋から出てきたエコーの姿を見て、気まずそうな顔を無理につくりつつも、すぐにいやらしい目つきに変わった。

 そしてタイサの腕を肘で小突く。

「ようやくですか。おめでとうございます」

「何の話だ?」

 タイサがボーマの意味に理解できず、首を傾げた。

「またまたぁ」

 ボーマは口元に手を当てて、さらにからかおうとしたが、タイサの後ろでエコーが苦笑して首を左右に振っている事に気付く。

「本当に………何もなかったので?」

「昨日は、エコーと二人で今後の方針について打ち合わせていただけだが?」

 ボーマがタイサの後ろを確認して、それが事実だと分かる。


 ボーマはわざとらしく咳をすると、タイサの腕を掴んだ。

「隊長。ちょっくらいいですかね」

「あ、あぁ」

 ボーマは真剣な表情で、タイサを隣の部屋へと引っ張り込む。

 そして扉を閉めると、すぐにタイサの胸倉を掴んだ。

「何で何もなかったんですか!?」

「はぁ!? お前、何を言って」

 ボーマは違う違うと汗をかいた頭を激しく振る。

「隊長。どうして一晩一緒にいて何もしないのかと聞いているんです! あれですか、隊長は女性に興味がないっていうアレですか!?」

「ち、違うわ!」

 ボーマもタイサの性格を理解していた上で、それ以上の事を言わなかった。


「普通はするものです」

 胸倉の力を緩めながら、ボーマがやんわりと教える。

「………済まん」

 彼はタイサから手を離すと、その胸を指で小突く。

「自分の事を棚に上げて言いますが………もっと隊長は副長の気持ちに応えるべきです。隊長の不器用さは、ある意味で相手を想っての事かもしれませんが、度が過ぎれば、それは反って相手に行動を強いる事になり、結果として悲しませる事に繋がると気付いて下さいや」

 副長が可哀想すぎる。ボーマが小さく呟いた。


「エコーにも似たような事を言われたよ」

 そして、タイサは彼女に自分の気持ちを伝えた事をボーマにも話した。

「知ってますよ………だからこそ、そのままの流れってものがあるじゃないですか」

 ボーマは悔しそうに大佐の胸をさらに小突く。

「………その通りだ」

 タイサは自分の事のように怒ってくれるボーマの気持ちがもまた嬉しかった。


「そうだな………普通ならばそうなんだろうが………ん、ちょっと待て」

 そこで我に返る。

「何で、俺とエコーとの会話をお前が知っているんだ?」

「はっ!」

 ボーマは大きな口を両手で隠す。


『隊長、真下はボーマの部屋です』

 扉越しからエコーの声が聞こえてくる。

「副長!? あぁ、そりゃぁないっすよぉぉぉ!」

「………ほほぉ」

 タイサの表情が反転、頬が引きつり始めた。

「隊長、そりゃぁあれだけの会話を外でしていれば、気になるっていうのが………あぁ、すいません。それだけは勘弁してください」

 タイサは両腕を開くと、ボーマの大きな顔に徐々に近付ける。

「うびゃぁぁぁぁ!」

 ボーマの頬は良く伸びた。

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