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タイサが目を開けると、そこは瓦礫の山だった。
あらゆる所にレンガや石垣が散開し、その量からは本来足元に大きな建造物があったのだろうと推測できた。
だが、見上げると建物の一部が残っている。
それは城の様相を残していた。
声もなく、音もない世界。
またかと感じるタイサの顔に、乾いた風が砂埃と塵を運んで当ててくる。
瓦礫の中にはいくつもの死骸が埋もれていた。何十人といる同じ鎧を纏った騎士達の中に、異なる装備を纏った三人の遺体が無残に横たわっている。
それは全身血まみれの大男、口元から一筋の血を流している褐色の肌をもつ細身の女性、体に穴を空けた弓兵の青年。いずれも既に命が尽きていた。
タイサの横目で、青年が息を切らせ、三人の遺骸へ駆け寄った。
その青年を見るのは二度目だった。青年は質素な革の鎧を身につけ、腰に一般的な長剣と漆黒の鞘に納められた黒の剣を携えていた。
青年の知己だったのか、彼は三人の死に青ざめ、体を震わせている。ついに膝をつき、拳で瓦礫を叩きつけ、間に合わなかった自分の情けなさを悔いていた。
いつの間にか、タイサの頬に一筋の涙が通っていた。
まるで両親を殺されたかのような怒りと、孤独となった哀しみが同時に襲い掛かる感情に襲われ、タイサは自分の胸に手を置く。
しばらくして青年は赤くなった目を擦ると、見上げた先にある崩れかけた階段に飛び乗り、上を目指していった。




