⑤姉妹の日常
呆れた顔のままシドリーが鼻で笑う。
「この前戦った相手といい、あいつも散々だな。77柱の名が泣くぞ」
「………そんなに強い騎士が来たんですか? 一体、どんな人なんでしょうか」
今度こそとカエデも会話に参戦する。
「お、カエデも流石に気になるか」
オセが指を向け、よく聞いてくれたと声を上げた。そして、仕方がないなと両手を腰に置き、自慢気に語り始めた。
「実は姉さんと戦ったっていう、あの騎士なんだよ! いやぁ、聞いていただけで見るのは初めてだったけどさ、アモンの攻撃を何発も受けても………あれ、姉さん、何でそれが出てくるのさ?」
オセがシドリーの手に握られた白銀の斧に気付く。
カエデは何も言わずに額の上に手を乗せ、静かに数歩下がった。
シドリーの口がゆっくりと開かれる。
「オセ、お前は私がその騎士について、気にしていた事は知っているな?」
「えっ、ああ。うん」
瞬間。激しい風と轟音に思わずカエデが体をすくめて目を閉じる。そして再び見開くと、そこにオセの姿はなく、家の壁穴がさらに大きくなっていた。
外も随分とよく見えるようになった。
街行くゴブリンやオーク達が家の中を覗く度に、またかと笑い、何事もなかったかのように、仕事に戻っていく。
「全く、話す優先度を知らないのか、妹は」
腕を組むシドリーが何度も床を踏む姿に、カエデは苦笑して誤魔化した。
―――兄貴だ!
表情を必死に抑え、カエデの脳裏に頼りなく笑う兄の姿が浮かぶ。そして、兄だけでなくエコーや他の仲間達も来ているに違いないと確信し、拳を強く握った。
「………どうした? 仲間が助けに来たのが、そんなに嬉しいか」
「えっ!? あ、いえ………その!」
それでも顔に出ていたのか、カエデは両手で自分の頬に蓋をする。
「表情からは分からなかったが………お前も分かりやすいな」
「うぅ………」
シドリーに誘導されたカエデの表情がしぼむ。そしてシドリーは何かを察したように小さく頷くと、改めてカエデに顔を向けた。
「一緒に来てもらおうか? その騎士の所へ」




