⑦小手調べ
「糞ったれがっ! 何なんだよ、こいつの硬さはっ!」
「………悪いがそれだけが取り柄なんでな」
相手の反撃を警戒し、アモンがその場から離れようとしたが、爪は盾に深く食い込んでおり、腕を引いてもすぐには引き抜けなかった。
タイサは体を捻りながら、盾ごと地面から足を離す。アモンはタイサの体重を支える事ができずに引き込まれ、遅れるように横に回転、タイサと共に地面に転がった。
「これだけ密接していれば、流石の速さも意味を成さないだろう!」
タイサは転がったまま踵を上げ、アモンの胸へと垂直に落とし込んだ。
「がっ、はぁっ!」
金属でできたタイサの脛当てが、彼の薄い装甲の胸に食い込む。寝たままでの攻撃故に、威力こそ完ぺきではないが、一時的に相手の呼吸を止める程度にはなった。
だがタイサはすぐに盾を手放し、アモンから距離をとる。
直後。アモンの両手から黒の混ざった炎が漏れ出し、騎士の大盾を溶かし始めた。
彼は咳き込みながら呼吸を落ち着かせると、口元を拭う。
「流石にうちの大将とやり合っただけはあるぜ。危うく味見で怪我をする所だった」
アモンは赤黒い炎を爪に纏わせて立ち上がると、両手を少し広げながら、いつでも飛び込めるよう体を前へと傾けた。
「さぁ、燃えてもまだ生きていられるかな?」
アモンのつま先曲がり、土を掴む。
「双方、そこまでだ」




